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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第327話 聞き込み

 荷物を置いた後、ノンたちは情報収集するためにナーティの街を歩くことにしました。しかし、五人まとまって動くのは目立つ上、効率的ではないので三つのグループに分かれることにしたのです。


(さてと……)


 分かれ方はアレッサとアゼラ、グレイクとミア、そして、単独のノンです。アゼラとミアは自衛ができないため、大人組と一緒なのは確定。また、ノンがどちらかについていき、二人組と三人組に分かれることも考えましたが子供相手だからと油断して話をしてくれる人がいてくれるかもしれません。その可能性をノン本人から提示し、単独行動することになりました。


「のどかだなぁ」


 ナーティは港町ということもあり、潮風が吹いています。季節はすでに夏に差し掛かっており、気温が高くなってきたため、潮風によって涼しく感じるのは気のせいではないでしょう。


 とりあえず、ノンは人が多そうな市場にやってきました。海路は使用できませんが漁業は盛んなようで屋台では新鮮な魚が売られています。しかし、時折、店主が客を呼び込む声以外、あまり賑わっておらず、どこか沈んだ印象を受けました。


「……」


 ゆっくりと市場を歩きながら彼は店主や屋台を利用する客を観察します。この街の住民なのか、世間話が盛り上がっている光景を何度か目にしました。逆にノンたちのような外から来た人は少ないように見えます。


(港を利用する人がいないからかな)


 ナーティはガルモ国のあるケレスカ大陸へ行く時によく利用される港町だとグレイクは言っていました。しかし、魔族との戦争のせいで海路は使えない。そのため、ナーティに立ち寄る人がいなくなってしまったのでしょう。


「おー」


 市場を通り抜け、今度は港へ。波に揺られる木製の船が何隻もありますが海の方を眺めても船の姿はなし。時刻はお昼時。漁はすでに終わり、漁船は全て帰ってきているのでしょうか。


「……」


 港に人影はほとんどなく、波の音しか聞こえません。試しに桟橋から顔を出して海を覗き込むと前世の海よりも綺麗なのか、海の中を泳ぐ小さな魚が見えました。


「おーい、そんな顔を出すと海に落っこちるぞー」


 しばらく魚を観察していると不意にタンクトップ姿の男性に声をかけられました。どうやら、ノンが海に落ちてしまわないか心配してくれたようです。


「あ、こんにちは」

「おう、こんにちは。坊主、こんなところで一人でなにやってんだ?」


 大人しく顔を引っ込めて立ち上がったノンは声をかけてきた男性を見上げました。よく鍛えられているのか、タンクトップの上からでも立派な筋肉が存在感を出しており、感心してしまいます。更にその肩に漁で使用する網が担がれているため、彼は漁師なのでしょう。


「初めて海を見たので覗き込んでました」

「初めて? ああ、確かに見ねぇ顔だな」

「はい、さっき着いたんです」

「へぇ、親の付き添いか? でも、なんだってこんな田舎に?」


 男性の問いにノンは数秒ほど思考を巡らせます。正直に言うか、それとももう少し探るか。


「……冒険者なので依頼のために来たんですよ」


 彼の答えは後者でした。ケレスカ大陸に行きたいと正直に言った場合、その理由を言うことになり、そこからアゼラたちの存在が露見してしまう可能性があったからです。今はとにかく、ナーティの現状を把握することが先。急いて事態が面倒なことになるのは避けたいところです。


「へぇ、冒険者か。こんなところに討伐対象の魔物とかいたかなぁ」

「あ、違うんですよ。この街に住んでる人にお届け物があったんです」

「ああ、そっちか。辺鄙な街までご苦労さん」


 ナーティ周辺に強い魔物はいないことは事前にアレッサから聞いていたため、咄嗟に運搬依頼だと言うと男性は納得したように頷きました。


「じゃあ、今、暇なのか?」

「え、あ、そうですね」

「なるほどなぁ。じゃあ、暇つぶしに付き合ってやるよ」


 子供一人でいるのは危険だと思ったのでしょう。男性は歯を見せながら笑い、ノンに手を差し伸べます。


「いいんですか? ありがとうございます!」


 もちろん、少しでも情報が欲しいノンに断る理由はありません。笑顔で頷き、その手を取りました。

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