第326話 ナーティ
「ここがナーティよ」
アゼラとグレイクの模擬戦から二日後、ノンたちは目的地である港町、ナーティに辿り着きました。海に接したその街は潮の独特な香りがするため、この世界で初めて海を見たノンはどこか懐かしい気持ちになります。
「ノンは海を見るのは初めてよね?」
「え、あ、いや、まぁ、はい」
「え、なんでそんなに歯切れが悪くなったの? まぁ、いいけど」
何の前触れもなく、問われたノンはあまり嘘を吐くのが得意ではないため、しどろもどろになりながら目を逸らしました。もちろん、ノンが嘘を吐いているとわかったアレッサですが触れない方がいいと知っているため、スルーします。
ナーティは海岸沿いに作られた街。その影響で外壁を建てられません。しかし、その代わりに西には広大な森が広がり、反対の東側は崖となっている珍しい地形なため、北側からしか街に入れない構図となっています。
また、崖の上にも住民たちは住んでいるため、崖側を上町、港側を下町と呼び、主に二つの区画で構成されているようでした。
「よし、通れ」
街の入り口で身分証明書を見せ、冒険者であることを証明した一行はナーティの街に入ります。なお、アゼラとミアは顔だけ見せて子供だと教えただけで街に入る許可を得られました。単純に子供が身分証明書を持っていることが稀だからです。
もちろん、獣人組はローブで姿を隠しているため、少し怪しまれましたがノンとアレッサは普通の人間だったからか予想以上にすんなりと通してくれました。
「んー、やっぱり活気はないわね」
街を歩きながら宿屋を探しますがナーティの街の空気はどこか沈んでおり、住民達もどこか元気がないように見えます。アレッサもそれに気づき、少し面倒臭そうに呟きました。
「やっぱり?」
「魔族との戦争のせいで海路は基本的に使えないのよ。奴らは飛べる個体が多くて海上で襲われたら簡単に船を沈められちゃうから」
その言葉にノンは王都で戦った魔族の男を思い出します。地下水道で戦ったせいでそこまで気になりませんでしたが彼も翼を使って宙を駆けていました。確かに船の上で魔族に襲われたら逃げるのは至難の業でしょう。
「本来、獣人の国まで船で行くとしたらどれくらいかかるんですか?」
「二週間ほどだ。その船の性能によっては一か月かかるかもしれない」
「まぁ、船が出せないんじゃ性能も何もないんだけどね」
ノンの質問に答えたグレイクと肩を竦めるアレッサ。この街に来る前から船の問題は浮上していましたが、やはりそれが直面するとどうしたものかと唸ってしまいます。
(とにかく情報収集かな)
海路の使用を禁止しているのはあくまで国の方針。もしかしたら許可を取らずに船を出している人がいるかもしれません。聞き込みをしてナーティの街が現状、どのような状態なのか知る必要があります。
「あそこなんかいいんじゃない?」
「そうですね。あの宿屋にしましょうか」
丁度、アレッサが手頃な宿屋を見つけたので一行は受付で部屋を二つほど確保。男部屋と女部屋に分かれ、情報収集するために荷物を置くことにしました。
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