第325話 反省会
「やっぱ、金級冒険者は強いなぁ」
矢の直撃を受けたアゼラですが先端を潰していたおかげで軽い打撲程度で済みました。その手当の最中、アゼラは少し悔しげに顔を歪めます。
「そりゃそうでしょ。こちとら、何年も冒険者やってないんだから」
腕を組んで呆れたような表情を浮かべるアレッサ。因みに手当は練習がてらミアが担当しており、ノンに教えてもらいながらゆっくりと作業しています。
「だが、矢の軌道を見極められていた。その点はよかったぞ」
「えー、そこだけ?」
実際に戦ったグレイクの評価にどこか納得していない様子のアゼラ。きっと、大槌を振って滞空時間を伸ばす例の技術にそれなりの自信があるのでしょう。
「あれは正直、曲芸の域を脱しない。実際、意識外からの攻撃に反応できていなかった」
「うっ……だって、上から来るとは思わないだろ!」
「オレが真上に矢を放ったところを見ていたはずだ。なら、矢が落ちてくると想像できるだろう」
「それは、そうだけど……」
内心、グレイクの指摘が正しいとわかっているのでしょう。彼はもごもごと何か言いたげに口を動かしますが結局、言葉は出てきませんでした。
「あれを実戦で使いたいならもっと工夫しろ。どんな攻撃をされても対処できるように考えろ。あれでは獣人の五感があったとしても反応が遅れていつか致命傷を受ける」
アゼラの技は回転しながら大槌を振るうことで空中でも上下左右に移動できるというもの。しかし、回転しているせいで視界はブレ、聴覚は聞こえる方向を間違えやすくなります。
「でも、矢は弾けただろ?」
「あれはどうやって気づいた?」
「それは……何となく」
「なら、駄目だ。直感は馬鹿にならないが直感に頼るのはその身を滅ぼすぞ」
「……わかったよ」
ギン、と厳しい目を向けるグレイクに彼は頭をかいた後、頷きました。しかし、やはり、自分の持ち味を見つけただけにまだ完全に呑みこめていないようです。
「アゼラ」
「っ、なんだよ」
そんな彼に話しかけたのは手当の手伝いをしていたノンでした。いきなり話しかけられたので少し驚いた様子でアゼラは視線を向けます。
「別に師匠もグレイクさんもあの技を否定してるわけじゃないんだよ。ちょっと使い方を工夫してもっと強くなって欲しいんだ」
「もっと、強く……」
その言葉をアゼラがどう受け止めたかはわかりません。しかし、少しの間、目を伏せた後、再びノンを見た時、その目にいつもの闘志が戻っていました。
「わかった。もっと考えてみる」
「うん、僕も協力するよ。大槌の使い方をもっと学べば何か思いつくかもしれないし」
「おう、そうだな! ミアも手当ありがと!」
「ふふっ、一緒に頑張ろうね」
すっかり元気になったアゼラはノンとミアにお礼を言って立ち上がり、アレッサとグレイクの方へと向き直りました。
「もっと色々教えてくれ! おれ、強くなりてぇんだ!」
「……ええ、もちろん」
「ああ、無理はするなよ」
ノンたちと出会って一か月。確実にアゼラとミアは強くなっています。ですが、それでもそれはまだ子供の域を超えていません。
「じゃあ、走り込み行ってくる!」
「私も魔力感知の練習しなきゃ」
しかし、アゼラもミアも強くなったことを自覚していますが驕ることなく、鍛錬を続けています。きっと、それが続く限り、二人はもっと強くなれるでしょう。
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