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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第323話 弓使い

「よろしくな、グレイク!」

「ああ」


 翌日、早速グレイクはアゼラの戦い方を見るために模擬戦に誘いました。もちろん、アゼラも了承してわくわくした様子でその時が来るのを待っています。


「はい、アゼラ」

「おう、さんきゅな!」


 もちろん、まだアゼラの大槌はないため、今回もノンの包帯製大槌を使用します。すっかり、大槌を扱うのに慣れた彼はそれを受け取った後、ウォーミングアップがてらその場でブンブンと振り回しました。


「……上手くなったな」

「だろ! アレッサってすげぇよな! 色々な武器の使い方を知ってんだぜ!」

「それがあの人の方針だったからね」


 アレッサの恩人であり、師匠でもある冒険者。魔族相手に一人で時間を稼ぎ、突如として消えてしまった彼を思い出しているのでしょう。ノンが設置したテーブルに座ったアレッサは面倒臭そうな顔をしながら頬杖を付きます。


 因みにその隣にはミアも座っており、魔力感知の練習をしているのか目を閉じて集中していました。アゼラの模擬戦を何度も見たおかげで今では不安そうにすることもなくなり、彼女の精神は一か月前に比べ、見違えるほど安定しているようです。


「オレの方は矢の先端を潰したものを使う。だが、当たれば痛いぞ」

「そんなのわかってるって。遠慮なくかかってこい!」


 アゼラはこれまで何度もノンやアレッサと模擬戦をしてきました。しかし、模擬戦とはいえ、転んだり、攻撃を受けた時に負傷することもあります。それでも模擬戦を止めないのはそれだけ強くなりたいという気持ちが強いから。グレイク相手でもそれは変わりません。


「……わかった」


 アゼラの目に燃え上がる闘志が見え、グレイクも踏ん切りがついたのでしょう。彼の手にスキルで作った弓矢が出現しました。


「……」


 それを見たアゼラも重心を低くしていつでも動けるようにグレイクをジッと観察します。その姿に慢心はなく、アレッサの教育がきちんと根付いているのがわかりました。


「ノン、頼む」

「では、始め!」


 ノンの合図に反応して動いたのはグレイク。右手に持った弓に矢を番え、その標準をアゼラの顔――よりも僅かに右を狙って放ちました。


「……」


 アゼラは身じろぎ一つせずにその矢を見逃します。瞬時に矢の軌道を読み、当たらないと判断して無視したのでしょう。


「ほう」


 弓使いと戦うのは初めてなのに随分と冷静な彼の様子にグレイクは少し感心しました。ですが、反応できなかった可能性もあるため、瞬時に次の矢を生成、弓に番えて放ちます。


「ッ……」


 今度の矢は頬を掠る軌道。それをアゼラはギリギリでしたが首を傾けることで回避しました。やはり、一射目は意図的に無視したのでしょう。


「これはどうだ?」


 動体視力、反射神経、冷静な判断。前衛を務めるのに必要な技術は最低限、身についているようなのでグレイクは二本の矢を生成。一本を真上に放ち、もう一本を彼の足に向かって射出。


「よっしゃ! こっちも行くぞ!」


 本格的に模擬戦が始まったと判断したのでしょう。アゼラは迫る矢を大槌で受け止め、弾き飛ばした後にグレイクへと突貫します。その動きは以前とは比べ物にはならないほど速く、グレイクは咄嗟に後ろに下がりました。


「逃がすかよ!」


 それを好機と踏んだのか、アゼラは更に速度を上げてグレイクを追いかけます。ですが、猫族特有の軽い身のこなしにより、時間を稼いだ彼は弓に矢を番え、アゼラへと放ちました。


「効くか!」


 もちろん、直線的な攻撃は今のアゼラには通用せず、大槌を振るって矢を吹き飛ばします。


「甘いな」

「なっ!?」


 しかし、その一瞬の隙を突き、グレイクは進路を後ろから前へ切り替えてアゼラへと接近。まさか弓使いが近づいてくるとは思わなかったアゼラは目を見開き、体を硬直させてしまいます。


「ガッ」


 そして、がら空きの腹部へグレイクの蹴りが直撃。そのままアゼラは後ろへと飛ばされてしまいました。

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