第30話 交流
螺旋階段を昇り始めたノンと精霊たちでしたが、すぐに問題が発生します。
「はぁ……はぁ……」
そう、あまりにも螺旋階段が長いのです。子供の体に加え、今日初めて外に出たノンの体力は少なく、すぐに息を切らしてしまいました。
『だいじょうぶー?』
『やすむー?』
「う、ううん……大丈夫だよ」
息絶え絶えの彼を見て精霊たちも少しだけ心配そうです。後ろからノンの様子を見ようと少しずつ彼の方へ近づいてきていました。このまま放置すればちょっとした拍子に精霊たちに押されて螺旋階段から落ちる、なんてことも起こるかもしれません。
(なんとか気を紛らわせないと)
大丈夫、という言葉はおそらく通じない。なら、どうするべきか。
一瞬だけ思考を巡らせた彼は小さく息を吸い、後ろにいる精霊たちへ人差し指を突き出しました。
「赤い子、声を出してー!」
彼の作戦、それは自分以外に夢中にさせること。螺旋階段を昇りながら色々と指示を出して精霊たちの気を引こうとしたのです。
『あかいー!』
『わー!』
「次に青い子!」
『わーい!』
『やー!』
最初は点呼。精霊は自分の色を自覚しているらしく、赤や青以外の色を持つ精霊たちもノンの掛け声に返事をしました。その隙に彼は螺旋階段をゆっくりと登り始めます。
「じゃあ、赤い子、その場でぐるっと一回転!」
ノンが指示を出すと赤い精霊たちはきゃあきゃあ言いながらその場で回転。その拍子に温かい熱がノンの肌を撫でたような気がしました。
「緑の子、一気に上昇!」
もちろん、それを気にしている場合ではないので次の指示を出します。緑の精霊たちが勢いよく上へと飛んでいきました。
(わっ……風が……)
緑の精霊たちが起こした風で僅かにバランスを崩しそうになりますが、なんとか立ち直って次の精霊へ視線を向けます。
「黄色い子、上下に揺れて!」
今度は黄色い精霊たちがノンの声に従い、揺れ出すと彼らからパラパラと砂の粒子が落ち始めました。
(この子たち、もしかして……)
「紫の子、一か所に集まってぎゅっ!」
とある予想をしながら指示を出すと紫の精霊たちが集まります。そして、彼らはゆらゆらと揺れる黒い塊へと変化しました。それを見つめているとどこか不安な気持ちになったのは偶然ではないでしょう。
「っ……青い子、水を出して!」
気を取り直し、青い精霊たちへより一層、具体的な指示を出しました。
『はーい!』
そして、彼らはノンの予想通り、数体ずつ集まって青い塊へと変わり、水鉄砲をあっちこっちへ放出します。
(この色って魔法の属性?)
赤は炎。青は水。黄色は土。緑は風。紫は――闇でしょうか? 彼らはその身に魔法の属性を宿し、それによって光り方が変わるようです。
『もっとー』
『つぎはー?』
『たのしー』
「あ、じゃあ、次は――」
精霊たちと交流することで彼らの生態が明らかとなり、少しだけ呆けていた彼でしたが今は王様に会うのが先決。精霊たちに指示を出しながら螺旋階段を昇ります。
「あはは、それなら!」
いつしかノン自身、一緒に遊んでいるような気持ちになり、楽しそうに笑いながら上を目指していました。
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