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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第321話 ミアの成果

 ボアレの街を出発して早一か月。何度か街を経由した彼らは目的地である港町までもう少し、というところまで来ました。


「グレイクさん、あそこに野兎がいます」


 ここは街道から少し離れた林の中、獣人でギリギリ聞き取れるほどの声量でそう言ったのはミア。ピクピクと垂れた耳と鼻を動かし、的確に野兎がいる場所を指さしました。


「……」


 その隣に立つのは『弓矢作成』スキルで作った矢を弓に番えたグレイク。ギリギリと弦が軋む音が微かに響き、矢先のブレが収まったところで矢を放ちました。


「ッ――」


 その矢は野兎の胴体へと突き刺さり、一撃で絶命させます。しかし、獲物が死んだ後も二人は動きません。特にミアは更に集中して周囲を警戒しました。


「……特に周りにはいません」


 獣人の鋭い五感を利用した気配察知。最近になってやっとまともに使えるようになった魔力感知。二重の索敵によって獲物を横取りしようとする存在がいないことを確認し、ミアはグレイクに声をかけました。


「ああ、よくやった」


 周囲に誰もいないことはグレイクも確認していたのでしょう。ミアの頭に大きな手を置いた後、死んだ野兎を取りに行きます。


「……えへへ」


 撫でられた頭を押さえ、ミアは口元を緩ませた後、グレイクの後を追いかけました。彼女は初めて自分だけの力で獲物を見つけ、その場所をグレイクに教え、獲物を殺した後も油断せずに索敵を行う。そんな完璧な仕事をしたのでした。






「ミアの斥候技術は順調に伸びているな。やはり、魔力感知を習得したことが大きい」


 その夜、ご褒美として野兎まるまる一羽を食べたミアはご機嫌な様子でアゼラと共に白いドームへと入りました。今頃、いい夢を見ていることでしょう。


 いつもならばノン、アレッサ、グレイクの三人で交代して見張りをするところですが、ミアの成長を共有しようとグレイクが話の場を設けたのです。


「この二週間、頑張ってたもの。私だけじゃなく、ノンにも聞いてたみたいだし」

「僕はあまり役に立てなかったですよ。話を聞きに来た時点で魔力感知はほぼ完璧でしたから」


 実際、ミアがノンに聞いた内容は『どうやれば魔力感知の範囲を広げられるか』というもの。実はノン自身、己の魔力感知の範囲が広い理由はわかっておらず、まともなアドバイスはできませんでした。


「これからは闇魔法を使える練習にシフトしましょ。きっと、斥候の役に立つわ」


 闇魔法は相手を惑わすことに特化しており、まさに斥候にピッタリの属性です。魔力感知で察知される危険性はありますが生物は視覚情報を頼る傾向にあるため、魔法だとわかっていても惑わされるでしょう。


「だが、もう少しで港町に着く。練習する時間は少なくなるぞ」


 ノンたちが目指している港町があるのはこの場から数日ほど歩いた先。今日の実戦も訓練の成果を確認する目的があり、合格ラインを超えていれば一度、訓練を一区切りさせる予定だったのです。


「そうなのよねー。あの子のことだから自主連させたら無理するからそれもできないし」


 アレッサの言うとおり、この二週間の間にミアが夜中まで魔力感知の練習をしたせいで寝不足となり、次の日がふらふらになってしまうことが何度もありました。


 その度に無理はするなと注意していますが好奇心旺盛かつ自分に自信のない彼女は自制が効かず、無理を繰り返す。魔法の訓練をすれば魔力を消費することもあり、倒れてしまうでしょう。


「とりあえず、基礎だけ教えるわ。ノン、ミアのことはお願いしてもいい?」

「はい、大丈夫です」


 魔力感知の精度に関してアレッサすらも凌駕するノンはミアの監視役としてピッタリです。


「アゼラの方はどうなんだ?」

「あー……」


 この二週間、グレイクはミアの方についていたため、アゼラがどのような状態なのか知りません。そのため、アレッサに聞いてみましたが、何故か彼女は気まずそうに目を逸らしました。

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