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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第319話 魔力感知

「じゃあ、今日から魔法を使う練習もしましょ」


 ミアが闇属性に適性があるとわかった次の日、アレッサは自分の鞄に両手を突っ込み、何かを探しながらミアにそう提案しました。


「は、はい! お願いします!」


 初めて魔法を学ぶミアは緊張した様子で頷きます。因みにアゼラはノンと簡単な組手をしており、その監督役としてグレイクが付いているため、ここにはアレッサとミアしかいません。


「まぁ、練習って言ってもまずは魔力を感じ取るところから始めなきゃならないんだけど……あ、あったあった」


 荷物を漁っていたアレッサは鞄から小さな水晶玉を取り出します。適性杖は魔法を扱う登竜門として有名だったため、色々な本に載っていました。しかし、その水晶玉に関しては読んだ覚えがなく、ミアは首を傾げます。


「あの、それは?」

「これは中に注いだ魔力を可視化できる水晶玉」

「可視化……」


 魔力を可視化。その言葉の意味が上手く理解できず、ただその言葉を繰り返すしかありません。ですが、普通は見えない魔力を見えるようにするのは純粋にすごい、とミアは呑気な感想を思い浮かべました。


「実はこれ、ただのインテリアなの」


 そんな彼女の考えを読んだのか、くすくすと笑ってその水晶玉をミアに手渡します。アレッサの言うとおり、この水晶玉は自分の魔力を注ぐことで任意の色を着色。それがふわふわと幻想的な動きをするのが見えるというおしゃれなインテリアです。


「見てて」


 水晶玉を持つミアに笑ってみせた彼女はそれに軽く触れ、魔力を注ぎました。すると、水晶玉に青い線が現れ、右に左に、上に下に。カーブを描きながらミアの目の前で踊り始めました。


「わぁ」


 その光景にミアは目を輝かせ、夢中になって観察します。しかし、確かにこの水晶玉は綺麗ですがこれと魔法の練習は関係があるのでしょうか。


「楽しんでるところ申し訳ないけど目を閉じて」

「え、あ、はい!」


 その指示に素直に目を閉じるミア。グレイクのアドバイスを聞き、周囲に気を配るようになったおかげで目の前に立つアレッサの息遣い。遠くで戦うノンと何かを叫びながら走るアゼラ。時々、グレイクがアゼラに言葉を投げかけているのがわかりました。


「うんうん、気配を感じ取ってるのは偉いわ。その集中力を全部、水晶玉に向けてみて」

「……」


 アレッサの指示に無言のまま、ミアは従いました。手に持っている水晶玉はミアの拳大。無機物特有の冷たさが手に広がりますが少しずつ自分の温もりで温かくなっていきます。


「……」


 ですが、それだけ。だって、この水晶玉はただのインテリア。それ以上でも、それ以下でもありません。他に何が――。


「――昨日のことを思い出して。私の魔力はどんな感じだった?」


 不意にそんな言葉が耳に滑り込んできます。アレッサの魔力。初めて魔力を感じ取ったため、具体的にどんなものだったのか。それを言語化するのは難しく、何か言おうとしますがそれは声にならず、息が外に漏れるだけでした。


「大丈夫。無理に言葉にしなくていいわ。感じたことを思い浮かべるだけでいいの」


 それならできそう。ミアは少しだけホッとしながら昨日のことを思い出します。彼女が拳を振るう度、それを追うように魔力が前方へと噴出。ノンへ接近しようと地面を蹴るとそれを手助けするように地面に魔力が迸る。そんな動きをしていたような気がします。


 しかし、おそらくアレッサが言いたいことはそうじゃない。アレッサの魔力を感じてどう思ったのか。やはり、それを言葉にするのは難しいですが、強いていうのなら苛烈(・・)。魔力なのにどこかメラメラと燃える炎のような熱さをミアは感じ取りました。


「……あれ」


 それを思い出していると似たような気配を感じます。大きい炎と小さな炎。大きい方は目の前に立つアレッサでしょう。しかし、もう一つの小さな炎は自分の手元――水晶玉から感じました。

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