第318話 適性杖
魔法適性。それは自分に魔法を扱える才能があるか。そして、どの属性が使用できるか。それを調べることを指します。
「私が使える属性は炎、水、風の三種類。それを調べるためにこれを使うのよ」
「あ、それ」
そう言ってアレッサが見せたのは小さな五本の短い杖でした。今にも折れてしまいそうなそれを見てミアが何かに気づいたように声を上げます。
「あら、これが何か知ってるの?」
「えっと、適正杖ですよね? 特殊な術式が組まれた杖で適性を持つ魔力を注いだ時、杖の先から小さな魔法が撃ち出されるっていう」
「やっぱり、ミアは物知りね。むしろ、魔物や魔法のことが記された本を集めた村長がすごい?」
ミアは暇があれば村長の家に行き、本を読んでいました。そのおかげで彼女は知識を蓄え、今日まで生き残ることができたのです。
「とりあえず、ミアが言ったように適性があればこんな感じでその属性の球が生成されるわ」
「おー、すげぇ!」
そう言いながらアレッサが水の適性杖に魔力を注ぐとその先端に小さな水の球が出現しました。それを見たアゼラが興奮したように声を荒げます。
「じゃあ、一本ずつ試してみましょ。まずは火から」
アレッサは持ち手に赤い極小の精霊石が埋め込まれた杖をミアに渡しました。通常、魔道具はコスパのいい魔石が使われていますが適性杖は魔法適性を調べる術式が高度であるため、極小の精霊石が使用されています。
「……」
適性杖を持たされたミアはごくりと生唾を飲み込み、ゆっくりと魔力を注ぎました。
「……反応、なしですね」
しかし、適正杖の先端に小さな火が灯ることなく、彼女は肩を落とします。これでミアには火属性の適性はないことがわかりました。
「うん、魔力の注ぎ方は綺麗ね。やっぱり、魔力操作が上手いわ。もしかしたら魔力循環もできるようになるかも」
「え、本当ですか!?」
「まぁ、魔力量は獣人にしては多いぐらいで何度も使ったらすぐに魔力切れを起こしちゃうけど……切り札の一つとして用意しておくのはありね」
「……」
そんなアレッサの言葉を聞いたノンは少しだけ罪悪感を抱いてしまいます。彼女は属性に適性がなかった場合、ミアが落ち込まないように別の活用方法を教えたのでしょう。実際、水属性の適性杖を手渡されたミアは先ほどよりも緊張が解けた様子で魔力を注いでいます。
「水も違うわね」
「はい……次、お願いします!」
それから彼女は土、風の適性杖に魔力を注ぎますが反応はなし。さすがにここまで来るとミアの表情も落ち込んだものに変わってきました。
「最後は、闇ね」
「……」
アレッサが最後の闇の適性杖をミアに差し出します。しかし、彼女はそれを受け取ろうと手を伸ばしますが何故かその途中で動きを止めてしまいました。
「ミア、どうした?」
「……五属性の中で闇属性の適性を持ってる人って稀だって本に書いてあったから」
彼女の言うとおり、他の四属性に比べ、闇属性を使える魔法使いは少ない。だからこそ、エフィが火、水、風、闇を使えると知ったアレッサは驚き、その才能に少しだけ嫉妬したのです。
ミアはやはりまだ自分に自信が持てず、どこか諦め癖が付いているところがありました。きっと、奴隷とされた時に心が折られ、その傷が彼女を蝕んでいるのです。
「そっか。じゃあ、ミアはその珍しい闇属性持ちなんだな!」
しかし、そんなミアにアゼラは笑いながらそう断言しました。
「え?」
「だって、村であんなに楽しそうに魔道具に魔力を注いでただろ! だから、大丈夫だって!」
ミアは村の住民に頼まれて魔道具に魔力を注いでいました。ですが、途中から効率よく魔力を注ぐ方法を模索するのが楽しくなったのでしょう。自ら進んでその仕事を引き受けていたのです。
「……うん」
アゼラの言葉に勇気づけられたのか、ミアはアレッサから闇の適性杖を受け取りました。
「……」
それから数秒ほど杖を見つめ、深呼吸を一つ。そして、杖に魔力を注ぎました。
「……ミア」
「は、はい」
「おめでとう。あなたは闇属性の魔法に適性があるわ」
「ッ! はい!!」
どこかホッとした様子のアレッサに今にも泣きそうな顔で頷くミア。彼女の手にある闇の適性杖の先端には紫色の小さな球が浮いていました。
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