第316話 魔法適性
アゼラの才能を見たノンたちですが、目的はあくまで彼らの故郷に辿り着くこと。そのため、立派な前衛になるための修行は時間を見つけてやるしかありません。
「見るのも修行。私とノンの組手を見てなさい」
「おう!」
それに加え、アレッサはノンの師匠。アゼラばかりに集中するわけにもいかず、今日はノンとの組手を見学させるようです。
「じゃあ、ノン。本気でかかってきなさい」
「行きます!」
久しぶりの組手ということもあってノンも気合十分。包帯を伸ばした状態でアレッサへと突っ込みます。それに対し、彼女は最初から喧嘩殺法魔法を使い、その両手に水を迸らせました。
「おお、なんだあれ!?」
「アレッサの使う魔法だ。相手の体内で魔法を形成して内側から破壊するらしい」
ノンとアレッサが肉弾戦を繰り広げている中、解説役となったグレイクがアゼラに喧嘩殺法魔法の説明をします。
「よくわかんねぇけどかっけぇ!」
「それってすごいことなんじゃ……」
しかし、魔法について詳しくないアゼラは上手く理解できず、その恐ろしさを正しく認識したのはミアの方でした。彼女が読んだ本の中に魔法に関するものがあったのでしょう。
「まぁ、獣人は魔法適性を持っている方が珍しいからな。あいつの魔法は触れたら死ぬとわかればいい」
「は? でも……」
グレイクの言葉に目を見開いたアゼラは模擬戦をしているノンへと視線を向けます。彼はアレッサの拳に右腕を当てて軌道を逸らし、その隙に彼女の懐へ潜り込もうと身を屈めたところでした。触れたら死ぬと言っていたのにノンは特に気にした様子はありません。
「ノンは別だ。包帯がアレッサの魔法を受け止めて無効化しているらしい。普通ならガードした腕が内側から吹き飛ぶ」
「うげぇ……あのスピードで接近されて拳が掠っただけでアウトなのか」
「……」
アレッサの胴体へ拳大にまとめた包帯を至近距離で撃ち出すノンを見ながらアゼラが僅かに声を震わせます。しかし、そんな中、ミアだけはノンとアレッサの戦いをジッと見つめていました。
「ミア?」
「……え?」
その様子がいつもと違うような気がしたグレイクが彼女に話しかけます。ですが、ミアは模擬戦を観戦するのに夢中だったのか、反応が遅れました。
「何か気になることでもあるのか?」
「あ、えっと……気のせいかもしれないんですけど」
そう言いながら何度もグレイクと模擬戦をする二人を交互に見た後、意を決したようにグレイクを見上げます。
「アレッサさんの腕とか足から何かが勢いよく噴出してるような気がして」
「……おい、それって」
彼女の言葉にグレイクは目を見開き、気づいてしまいました。どうやら、ミアは魔力感知ができるようになったようです。
「へぇ、私の魔力循環を感じ取ったのね」
結局、模擬戦はアレッサの勝利。やはり、まだノンは【迅雷】に対する有効打を持っておらず、いつものように一気に距離を詰められて降参しました。
その後、グレイクが模擬戦中のミアの様子をアレッサに伝えると彼女は興味深そうに居心地が悪そうに目の前に立つミアを見つめます。
「で、でも、気のせいかも? 魔力循環を使ってるノン君からは特に感じなかったので」
「あの子は特別なのよ。しかも、何かを感じたのは拳と足からなのよね?」
「はい」
「うん、少なくとも鍛える価値はあるわ。それにミアは獣人にしては魔力を持ってる方だし」
「え、そうなんですか?」
まさかアレッサからそう言われると思わなかったようでミアは大きく目を見開きました。彼女は故郷の村でよく魔道具に魔力を注ぐのをお願いされていましたが、自分の魔力量について考えたことはなかったのです。
「じゃあ、今度はミアの方を見てあげましょうか。もしかしたら、魔法が使えるかもしれないし」
「私が、魔法?」
こうして、ミアの魔法適性を調べることになりました。
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