第313話 勘違い
当初のプロットには全くなかった獣人の国編のはじまりはじまり。
なお、アゼラやミアすらもプロットにはいなかったもよう。
君たち、一体どこから生えてきたんだい?
獣人の子供たちを保護した小さな英雄は自分の目的を後回しにして彼らを故郷へ帰す約束をしました。そして、魔法使いの師匠、弓使いの狩人さんと共に獣人の国を目指します。
もちろん、その道中は決して楽なものではありませんでした。しかし、彼らは獣人の国へと辿り着き――獣人と人間の関係を目の当たりにします。今まさにその関係が途切れそうになった時、小さな英雄が立ち上がりました。
ですが、そんな事件があったからこそ、彼は英雄となれたのです。だって、その事件が彼に人との繋がりの大切さを教えてくれたのですから。
「ほら、また速度が落ちてるわよー」
「くっそおおおお!」
ボアレの街を出て早二週間。獣人の国へ行くために港街へ向かうノンたち。その道中、魔法使いのアレッサは熊族の子供、アゼラの真後ろを走って彼を急かします。そんな彼女に叫びながらアゼラは汗だくのまま、走るスピードを上げました。もちろん、旅の仲間を置いて行かないように離れたらUターンして、彼らの傍に戻ったらまた踵を返して走る。そんなシャトルランのような走り込みをしています。
「気配を消すコツは周囲の環境に溶け込むことだ。例えば、森。お前ならどこに隠れる」
「うーん、木の上、茂みの中……ううん、それだと体が風を遮って木とか草の揺れ方が変わっちゃうか。どんな障害物があるか、その森次第だろうし」
「いや、それでいい。安直に木の上や茂みに隠れるものだと決めつけるより、その場の状況次第で隠れ場所を決めるべきだ。相手がノンのような魔力感知に優れているならどこに隠れていても意味はないしな」
「えー……グレイクさん、それはないですよ」
そんな彼女たちが気にならないのか、猫族の狩人、グレイクが犬族の子供のミアに斥候のコツを教えていました。最初の頃はグレイクもミアも遠慮した様子で話していましたが今では歩きながらグレイクの持つ知識を教えるようになっています。
「あ、みなさん、止まってください」
そんな彼らを止めたのは齢六歳の銅級冒険者であるノンでした。その声にアレッサたちは走り込みを止め、ノンたちの傍へと戻ってきます。
「どうしたの?」
「左の方に多数の魔力反応です。多分、低級魔物の群れ、かな。こっちには気づいてないので少し迂回した方がいいかもです」
アレッサはアゼラの体力作り。グレイクはミアの斥候教育を務めているため、主にノンが周囲の警戒をしていました。更に彼は超広範囲の魔力感知を使用できるため、この二週間、魔物との遭遇はほとんどありません。
「オッケー。ノン、地図を出して」
「はい、どうぞ」
アレッサの言葉にノンはマジックバックから地図を取り出し、彼女に渡しました。そして、そのままグレイクの傍に移動して二人でルートを考え直し始めます。
「ぜぇ……ぜぇ……あ、アレッサ、マジやべぇ」
その時、今にも倒れそうなアゼラがノンに話しかけてきました。熊族である彼は子供でも人間に比べ、身体能力が高く、体力もある方です。しかし、アレッサは金級の冒険者。訓練を受けたばかりのアゼラでは相手にもなりません。
「なんで、後衛の魔法使いがあんなに……体力あんだよ。あんな暑苦しそうな恰好なのに汗一つ流してねぇぞ」
「え?」
そんなアゼラの言葉にノンは首を傾げてしまいました。何故なら、アレッサは魔法使いですがこのパーティーの前衛だからです。てっきり、アゼラの体力作りの面倒を見ていたので知っていると思っていたからこそ、彼の勘違いに驚いてしまったのです。
「えっと、アゼラ? 師匠は前衛だよ?」
「は? 何言ってんだ? 魔法使いは後衛だろ」
「いや、普通はそうなんだけど――」
「――よし、迂回ルートを決めたわ。魔物に見つかる前にここを離れましょ」
その勘違いを訂正しようとしたノンですがその前にアレッサに止められてしまい、結局、アゼラの間違いを正すことはできませんでした。
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