第300話 責任
次の日、ノンはグレイクを宿屋の外に呼び出して獣人の国へ行く方法、獣人との関係問題の解決方法を簡潔に伝えました。
「……なるほどな」
話を進める度、目を見開いて驚いていた彼ですが最終的にはノンの提案に納得します。もちろん、実際に港町へ行ったり、獣人との関係が険悪にならない可能性があるのでもう少し情報が必要となりますがそれでも試す価値はあると判断してくれました。
「だが、ミアはどうする? 何もしなければいずれ潰れるぞ」
現在、ミアはアレッサと一緒に女子部屋にいます。昨日の夜はなんとか乗り越えましたが朝食時、アレッサも少し難しい顔をしていたので限界が近いのでしょう。
「……僕に任せてくれませんか?」
自信はありません。もしかしたら余計に自体がややこしくなる可能性だってあります。ですが、全てノンが始めたこと。その責任を取るのは自分であるべきだと思ったのです。
「……わかった。何かあったらいつでも相談してくれ」
グレイクはそう言うと宿屋の中へと戻っていきました。残されたのはノン一人。それでも彼は昨日とは違い、その目はやる気に満ちていました。
「えっと、ノン君。どこに向かってるの?」
グレイクとの話し合いの後、色々と用事を済ませたノンは女子部屋にいたミアに声をかけて宿屋の外に連れ出しました。しっかり、耳や尻尾を布で隠している彼女ですがノンの後ろにぴったりと張り付き、僅かに震えています。
「実はお願いしたいことがあるんだ」
「お願い?」
「うん、実はギルドで依頼を受けたんだけどその魔物がちょっと厄介で」
そう言いながらノンは冒険者ギルドで受け取った依頼票をミアへ見せました。そこには『シャドーラビットの討伐』と書かれています。
「シャドーラビット……この魔物って確か見つけるのがすごく難しいんじゃなかった?」
シャドーラビット。闇魔法を操る小さな兎で危険度はそこまで高くありませんが影の中へと潜り込み、逃げられてしまうのです。それ以前に臆病な正確なため、基本的に隠れるように生きているせいで見つけることすら困難。そのため、シスイールと同様、ボアレの冒険者ギルドで塩漬けになっている依頼でした。
「うん、困ってることがないか聞いてみたらこの依頼を紹介されたの。でも、さすがに僕一人じゃ難しそうだから手伝って欲しくて」
「……私じゃなくてもいいんじゃないかな。それこそアレッサさんやグレイクさんと一緒にやった方が」
「これはミアじゃないとできないことなんだ」
ノンの言葉に嘘はありません。アレッサは魔法の天才ですがとりあえず殴れ、と脳筋なところがありますし、グレイクもシャドーラビットを射抜けるとは思いますが索敵方法が獣人特有の研ぎ澄まされた感覚しかないため、シャドーラビットを見つけること自体、厳しいでしょう。
「だから、お願い。力を貸して」
「えっと……協力はするけど、私は何をすればいいの?」
ミアは冒険者にもなっていないただの子供。そんな自分が役に立てるとは思っていないのでしょう。ですが、ノンはそう考えていないようで自信ありげに笑います。
「グレイクさんが言ってたけどミアには斥候……つまり、シャドーラビットを見つけて欲しい」
「シャドーラビットを、見つける?」
「うん、とりあえず詳しい話はシャドーラビットがいる森に行ってから話すね」
そう言ってノンは視線を前に移します。ミアもその後に続き、自分たちが街の外に出るための門の前にいることに気づきました。
「じゃあ、行こっか」
「……うん」
手を差し伸べたノンの右手を見た後、彼女はおそるおそるその手を掴み、二人は街の外へと出たのでした。
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