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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第四章 狩人さんは想い人に会いたい
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第298話 自問

 時刻は深夜。ボアレには王都のような繁華街はないため、すっかり静まり返っています。


「……」


 そんな中、宿屋の屋根に登り、少しだけ雲のある夜空を見上げる子供がいました。そう、ノンです。春になってからそれなりに経ち、そろそろ夏に差し掛かる季節ですが、夜は肌寒く、靄のかかった頭を冷やすにはちょうどよさそうでした。


「どうしたい、か」


 アレッサにミアの今後について問われた彼は何も言えませんでした。もちろん、彼らを故郷に帰したいという気持ちに変わりません。


 しかし、そのためにはミアの精神を安定させなければならず、ノンはその方法が思いつきませんでした。あの後、グレイクにも相談しましたが彼も難しい顔をして首を横に振り、アレッサと同意見だと言われる始末。冒険者は時に選択を迫られ、何かを見捨てる必要があります。きっと、アレッサもグレイクもこれまで様々な選択を強いられ、その度に選んできたのでしょう。


「……」


 それに比べ、ノンはどうでしょうか。精霊の国で一年間、オウサマから物事を教わる中で綺麗事ばかりではないと何度も言われました。盗賊の件もその一つです。可能な限りのフォローはしましたがそれでもノンたちを襲った盗賊の中には魔物や同業者に殺された人もいました。その内訳は盗賊討伐の報酬金を見れば一発でわかります。


 ですが、盗賊に関しては自業自得なので前世で平和な日常を送り、命のやり取りを経験していなかった彼でも納得ができました。多少の罪悪感はありますがそれでも自分が躊躇うだけで仲間が危険に晒される。ノンも人間です。悪い人たちよりも近しい人の方を優先するのは当たり前であり、全ての人を救えるとも考えていません。


 しかしながら、今回ばかりは盗賊のようにすぐに納得できるわけがありませんでした。だって、ミアは獣人の子供であり、彼女は何も悪くないからです。


 グレイクから情報を共有されましたがアゼラとミアの故郷はケレスカ大陸にあるガルモ国近くの村だそうです。そして、その村の近くにある森で遊ぶついでに食料の調達をしている最中に襲われた。これまで怪しい人物の目撃情報がなく、何度も同じように森へ遊びに行っていたため、油断していたのでしょう。


 それから彼らは従属の首輪――許可を得た奴隷商だけが使用を認められている奴隷専用の首輪を付けられ、逆らえられなくなってしまったそうです。そのまま、ハーニンド大陸まで秘密裏に輸送され、もう少しで彼らを攫った奴隷商が拠点にしている街に着く、というところで魔物に襲われた。その騒動の最中に二人の首輪が衝撃で壊れ、ここまで逃げてきたそうです。


「四か月、か」


 グレイクの話ではアゼラたちの故郷へ行くためには少なくとも四か月の歳月がかかるとのことでした。ノンたちがいるボアレはハーニンド大陸の中でも南側にあり、このまま南下して港町まで行き、ケレスカ大陸行きの船に乗る。その後、ガルモ国内を歩いてやっと辿り着けます。


 ですが、大きな問題が二つ。


 一つは今、魔族との戦争のせいで海路がほぼ使用できない状況であること。少なくとも国が認可している船はほとんど動いていないそうです。そのため、港町に行っても彼らはケレスカ大陸には行けません。アゼラたちはきっと、密航船によってハーニンド大陸に連れて来られたのでしょう。


 そして、二つ目の問題。それは今回の事件の原因が人間の奴隷商であること。どうやって、ケレスカ大陸に渡ったかわかりませんが全面的に人間側が悪いため、最悪の場合、獣人族との外交問題にまで発展してしまう可能性があるそうです。


 更にケレスカ大陸にいる種族のほとんどが獣人族。人間であるノンやアレッサは悪目立ちしてしまい、旅に支障が出てしまうかもしれません。それこそアゼラたちのことが獣人側にバレてしまったらノンたちを犯罪者扱いされ、襲撃されるでしょう。アゼラたちを送り届けた後、ハーニンド大陸に戻って来られる保証はありません。


 ミアの問題だけでなく、彼らをおうちに帰すのも難しい。それがアゼラから話を聞いたグレイクの見解でした。


『もし、無理だと思ったのならオレが責任を持ってあいつらを故郷へ帰す。だから、よく考えて結論を出して欲しい』


 そう言って彼はノンの頭に大きな手を乗せて笑いました。アゼラたちの問題をノンが背負う必要はない、と言ってくれたのです。


「……」


 それも踏まえてノンは考えなければなりません。この後、どうするべきか。自分はどうしたいか。誰かに決めてもらうわけではなく、ノン自身が考えて答えを出さなければならないのです。

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