第291話 後悔
「この機に確認してもいいか?」
グレイクの勧誘に失敗したノンですが、何か気になることがあるようでグレイクが少しだけ神妙な表情を浮かべながら問いかけました。もちろん、断る理由はないのでコクリと頷きます。
「お前は自分から家族を探しに行くと言った。現実は理不尽だから……明日には会えなくなるかもしれないから、と」
「……」
「だが、その一方でアゼラたちを家に帰すと約束した。お前の行動は少し矛盾しているように見える」
「それは……」
グレイクの言うとおり、現実の理不尽さを知っているはずなのにノンはアゼラたちのことを背負いました。彼らを家に帰している間に家族に万が一のことがあるかもしれない。ノンもそう考えなかったわけではありません。
「別に責めているわけではない。ただ、気になったんだ。教えてくれないか?」
「……あの子たちをここで見捨てたら胸を張れないから、でしょうか」
「……」
彼の質問にノンはそう答えました。その答えにグレイクは続きを待つように真っすぐノンの目を見つめます。
「だって、嫌じゃないですか。救えるはずだった命を見捨てるなんて……それに家族と再会した時、必ず僕は後悔します。あの子たちの犠牲の上にある再会なんて望んでません」
ただ、ノンは後悔したくないだけでした。きっと、ノンたちがいればアゼラたちが家に帰られる可能性は格段に高まるでしょう。
逆にここでアゼラたちの手を振りほどけば彼らは途中で野垂れ死ぬか、再び悪い人に捕まって奴隷にされてしまうかもしれません。少なくともまだ子供の彼らが生きて家に帰られる可能性はほぼゼロ。
だからこそ、ノンはアゼラたちの手を取ったのです。自分と同じ境遇である彼らを放っておけなかったから。
「それでお前の家族と出会えなくてもか?」
「家族と再会できないなんて考えたくはありませんがもし、そうなってしまった場合、僕は後悔しますよ。でも、アゼラたちを助けなければよかった、とは思いません」
むしろ、自分とは違ってあの子たちは家族と再会できてよかった、と安堵するでしょう。
「……わかった。約束通り、あの子たちを家に帰すまで一緒に行動する。その後、一緒に旅はできないが可能な限りの手伝いをさせて欲しい」
「え、いいんですか?」
てっきり、アゼラたちを家に帰したら関わりを断つと思っていたのでノンは驚いてしまいます。そんな彼にグレイクは苦笑を浮かべました。
「さっきも言っただろう。お前だって家族と一日でも早く再開するべきだ、と。できることは少ないかもしれないが」
「まぁ、できることといえば立ち寄った街の冒険者ギルドにある掲示板に貼り紙を貼ることぐらい?」
今のところ、王都まで一緒に旅をしたマーシャが貼り紙を貼ってくれると約束してくれています。ですが、彼女はあくまでも商人。活動拠点は王都になるでしょうし、他の街に行くのも商売が第一優先。冒険者ギルドのない街へ行くことも多いでしょう。
それに比べ、グレイクは金級の冒険者。マーシャよりも冒険者ギルドに行く機会は確実に多く、冒険者ならではの情報網からノンの家族に関する情報を得られるかもしれません。
「なるほど、確かに人間の国は広いからな。協力者は多い方がいいだろう。他にもできることがあれば言って欲しい」
「……ホント、昨日までとは別人みたい。人間嫌いじゃなかったの?」
「今でも人間は嫌いだ。だが、ノンは子供だろう? 守られるべき存在を敵視しても、な」
「それ、遠巻きに私は嫌いだって言ってない?」
「さぁ、どうだかな」
挑発するように肩を竦めるグレイクにアレッサはジト目を向けますがアゼラたちが寝るテントで物音がしたため、仕方なくその拳を降ろしました。
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