第277話 判明
クレイウルフを殲滅して無事に二人の子供を助け出したノンですが少しだけ困ったことになりました。
「……」
「……」
ボロボロの布で体を隠した彼らはノンとグレイクに対して警戒心をむき出しているのです。普通、助けてくれた相手には多少の好意を持つものですが、子供たちは今にも襲い掛かってきそうなほど怒りを露わにしていました。
子供たちの姿は布のせいでわかりませんが、おそらく倒れていた方は男の子。そして、茂みに隠れていた子供は女の子のようです。
「えっと……怪我はない?」
「ふん!」
ひとまず話しかけてみましたが男の子は腕を組んでそっぽを向きました。完全に取り付く島もありません。
「……」
グレイクも子供たちを見てはいますが確実に口数が減ってしまいました。不機嫌、というわけではないようですが、なにか思うところがあるのでしょうか。
「……すみません。ありがとうございました」
「なっ、おい! なんで人間にお礼なんか!」
ノンがどうしようかと悩んでいると女の子が僅かに声を震わせてお礼を言いました。そして、そんな彼女を男の子が咎めます。
「だって、あのままだったら狼さんに食べられてたよ……」
「それは、そうだけど」
「……」
女の子に言いくるめられた男の子はどこか居心地が悪そうに頭をかきます。そんな彼らを見ていたグレイクはおもむろに歩き出し、二人の前で片膝を付きました。
「お前たち、獣人だな」
「ッ!?」
「え、どうして」
「あ、馬鹿!」
「だって、驚いちゃって……」
グレイクの質問に女の子が驚いたように声を漏らしてしまいました。彼女の反応を見るにどうやら本当に獣人のようです。そんな彼女に男の子が怒りますが女の子が驚いてしまうのも無理はありません。だって、彼らはボロボロの布で姿を隠していたのですから。
「グレイクさん、どうしてわかったんですか?」
「……」
ノンもグレイクが彼らの正体に気づいた理由が気になり、問いかけました。しかし、彼の答えはなく、ただノンへと視線を向けるだけです。
「……それは」
数秒ほど経ったでしょうか。小さく息を吐いた後、グレイクはフードを外しました。
「……え」
灰色の短い髪。キリっとした鋭い目と鼻筋。まさにファンタジー世界に出てくるイケメン、と呼ぶに相応しい美男子でした。声などでそこまで歳は取っていないとなんとなくわかっていましたがグレイクは二十台前後の青年だったのです。
そして、なによりノンが驚いたのは彼の頭に可愛らしい猫耳が付いていたことでした。ピクピクと震えるそれは偽物ではないと訴えているようです。
「ま、さか……グレイクさんも獣人?」
「ああ、猫族だ。これで少しは安心できるだろ」
「……」
顔を晒した彼に子供たちは顔を見合わせ、頷いた後、ボロボロの布から顔を出しました。グレイクの言うとおり、男の子の頭には熊のような丸い耳が、女の子には垂れた犬耳があります。
「え、それ……」
ノンは彼らを見て思わず声を震わせてしまいました。二人の首には大きな首輪が付けられていたからです。
(まさか、そんな……)
ボロボロの布で体を隠していたこと。こんな街から離れた場所で子供だけで逃げていたこと。今にも消えてしまいそうな魔力反応。そして、大きな首輪。
全ての点が繋がり、ノンの頭に一つの答えが浮かびます。ですが、その事実は彼にとってあまりにも衝撃的であり、いつまで経ってもそれは言葉にならず、口をパクパクと動かすしかありません。
「……奴隷」
そんな思考を停止してしまったノンの代わりにグレイクが怒りの滲んだ声でその単語を口にしました。
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