第270話 雨宿り
「あーあ、本格的に降ってきちゃった」
外の様子を見ながらアレッサは面倒臭そうに呟きます。彼女の言うとおり、すっかり土砂降りとなってしまい、この状態で歩けばすぐにびしょ濡れになって風邪を引いてしまいそうでした。
「……」
「はい、グレイクさん」
「……ああ」
焚火で炙っていたシスイールの串焼きをグレイクに渡すノン。彼は何とも言えない雰囲気を漂わせながらそれを受け取りました。
「師匠、焼けましたよー」
「はーい。わぁ、いい香り」
「いただきまーす」
続けてアレッサにもシスイールの串焼きを渡し、ノンもこんがりと焼けたそれにかぶりつきます。味付けは塩のみですがシスイールの肉はふわふわであり、噛むほどに魚特有の甘みが口の中に広がっていきました。
「んー、美味しい! ねぇ、もっと焼きましょ! 今日はシスイールパーティーよ!」
ガツガツと串焼きを食べるアレッサは傍に置いてあった焼いていないシスイールの串を焚火の近くに突き刺します。
「……なぁ」
「ん? 何よ、早く食べないと焼けるのを待つことになるわよ」
「いや……はぁ」
何か言いかけたグレイクですがもぐもぐとシスイールを食べる二人を見て言う気が失せたのか、深いため息を吐いて周囲を見渡します。
彼らがいるのは白いドームの中。そう、ノンの白い包帯で作ったシェルターです。焚火をしているため、入り口は開けたままですが雨を完全にシャットアウトしており、煙が籠らないようにたまに天井の包帯に隙間を作って換気を行う徹底ぶり。その隙間から雨が入って来ないようにシェルターの上に大きな屋根も作っています。
雨が降ってきた後、どうにか雨を凌ごうとした三人ですが予想以上に雨足が早く、このままでは全員びしょ濡れになると判断したアレッサがノンに白いドームを作るように指示したのです。
ノンもすぐに賛成して戸惑うグレイクを置いてさっさと白いドームを作り、中に入るように手招きしました。そして、それだけに飽き足らず、湖畔に置いてあるシスイールをノンがささっと切り分けてよく下拵えをした後、串焼きにして焼き始めたのです。
「こんなに美味しいならシスイールのお肉も少しだけ持って帰りましょうか」
「そうね、賛成!」
いつもならマジックバックに切り分けたシスイールの肉を詰め込むところですがグレイクがいる現状、それはできません。そのため、ノンは普通の鞄に入るほどの大きさに切って腐りやすいものを保存するために常備しておいた抗菌性の高い葉でそれを包みます。
「……いつもこうなのか?」
「え? いつもこんな感じですよね?」
「ええ、そうね」
そんなやり取りを見ていたグレイクはどこか引いた様子で二人に話しかけました。しかし、ノンたちからしてみればどうしてそんなことを聞くのはわからず、戸惑ってしまいます。
「……冒険者は危険な職業だ。それなのにお前たちは……冒険そのものを楽しんでいるように見える」
そう話すグレイクの声音はどこか低く、まるでノンたちを試しているようでした。
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