第265話 初撃
軽い昼食を終え、少し歩いたところで三人は無事にフォスイールが生息している湖に到着しました。それまでは鳥の鳴き声や動物が走り去る音など生物の気配がしていましたが、不思議と湖の周りは静かです。
「……」
茂みの中から三人はそっと顔を出し、湖を観察します。広さはそれなりであり、巨大なフォスイールが伸び伸びと泳げるでしょう。そして、やはりというべきかノンの魔力感知に引っかかった魔力反応は一つしかありません。あまりに小さな魚までは把握しきれませんが少なくとも魔物の類はいないことはわかりました。
「多分、あの湖に住んでいる生物はフォスイールだけのようです」
「……そうか」
ただ湖を見ただけでそう判断したノンにグレイクは何か言いそうになりましたが彼に常識は通じないと何となくわかってきたのか素直に受け入れてくれました。
「それでどうやってフォスイールを引きずり出す?」
「こうする」
アレッサの質問にそう答えながら彼は弓と矢を作りました。弓の方はアレッサとの決闘で使っていた普通の弓。しかし、矢の方は先端に丸い砲弾のようなものが付いていました。
「それは?」
「衝撃を与えたら大きな音が出る道具だ」
「あなたのスキル、弓とか矢であればそんな道具が付いたものも作れるの?」
「それなりの魔力を使うがな」
そう言いながらグレイクは特殊な矢を弓に番えて射出。矢は湖の方へ飛んでいき、ほぼ中央に着水。その瞬間、凄まじい轟音が湖に響き渡りました。
「うわっ、あんなに大きな音が出るなら教えなさいよ! 耳が痛いじゃない!」
「……来るぞ」
慌てて耳を押さえながら文句を言うアレッサ。そんな彼女を無視してグレイクは湖を指さしました。そして、それとほぼ同時に湖の中から巨大な黒い生物が大量の水をまき散らしながら姿を現します。
「うわぁ……」
その巨大な黒い生物はまさに鰻。ここからでも肌がぬめぬめとしており、触ったら嫌な思いをしそうです。しかし、問題は鰻の大きさが予想以上であり、ノンは思わず声を漏らしてしまいました。
「確かにフォスイールね。大きさが桁違いだけど」
「むしろ、的が大きくなって当てやすい」
フォスイールは大きな音の原因を探しているのか、周囲を見渡してします。小さな目が左右に二つずつあるのも確認できました。あの四つの目を同時に潰せば分裂は起きず、あとは駆除するだけです。
「分裂するのって目を潰した時だけですか?」
「そう……と言いたいところだけど目が残った状態で絶命しても分裂するわ。だから、最初に目を潰さないと駄目なの」
アレッサはため息交じりに教えてくれました。やはり、一筋縄ではいかないようです。ですが、フォスイールはまだノンたちを見つけていません。目を潰すなら今がチャンスです。
「……」
「え、グレイクさん?」
グレイクも同じことを考えたのでしょう。新たに二本の矢を作って弓に番えました。その矢は通常のそれとは違い、矢の中央に筒のような部分が付いています。しかし、それ以上に矢の照準が明らかにフォスイールから外れていたため、ノンは思わず声をかけてしまいました。
「最初の二本を曲げる。着弾を同時にするために時間差で放つ必要があるからな」
「おお、なるほど」
さすがの彼でも同時に四本の矢を射ることはできないようでした。納得するノンを尻目に彼は矢を放ちました。更にその矢の軌道を見ながら普通の矢を生成。それを番えてタイミングを計ります。
「あ!」
あらぬ方向へ飛んでいった最初の二本の矢は筒のような部分のおかげがグン、と曲がり、フォスイールの反対側に目に向かい始めました。どうやら、矢に付いていた筒のような部分が風の抵抗を受けて軌道を変えたようです。
「っ!」
そして、グレイクは普通の矢を放ちました。曲がる矢と普通の矢。確かにこのままいけばフォスイールの目を同時に射抜ける。ノンはそう確信して笑みを浮かべようとして気づきました。
フォスイールは閉じていた新たな目を開けたのです。
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