第264話 担当
「じゃあ、出発するわよー」
次の日、魔物も夜盗も襲って来ず、平和な夜を過ごした三人はテントを片付けて湖を目指して歩き始めました。今日の天気は曇天。今にも雨が降り出しそうなほどの厚い雲をノンは見上げます。
「師匠、雨は降りそうですか?」
「んー……この様子なら夕方には降りそうね。フォスイール駆除は早めに終わらせた方がいいわ」
アレッサは長年、冒険者をしていただけあって天気を読むのが上手いです。ノンも彼女から指導はされているものの、こればっかりは経験が物を言うことなのでまだアレッサのように天気の動きを言い当てることはできません。
「グレイク、今のうちにフォスイール駆除の作戦を考えておきたいんだけど」
「別にオレが遠くから矢を射る。それだけだ」
「四つ同時にいけるの? フォスイールの目は側面に二つずつ。右から狙ったら左目が、左から狙ったら右目が狙えないわ」
「特殊な矢を使えば軌道を曲げられる」
グレイクは金級の冒険者。それも弓使いなのにソロで活動しています。きっと、それだけ腕に自信があるのでしょう。
「……まぁ、あなたならいけるか」
「でも、フォスイールは水魔法を使ってくるんですよね? なら、矢を射るまでグレイクさんを守らなきゃ駄目ですね」
アレッサも昨日の決闘でグレイクの実力を認めたようで素直に引き下がりました。しかし、そんな二人の会話にノンが割って入ります。
「守る?」
「はい、水魔法は威力が低い分、術式が完成するまでの速度は五属性の中でトップです。きっと、フォスイールも矢を放とうとするグレイクさんを狙ってきます」
「なら、ノンは水魔法をお願い。私はフォスイールの注意を引くわ」
「おい、待て。どうして、お前が魔法を担当しないんだ」
いつものように魔法の対処をノンに任せようとしたアレッサですが、グレイクが待ったをかけました。
魔法は普通の物理攻撃とは違い、対処するのが難しく、魔法を撃たれてしまった場合、魔法使いが自身の魔法を放って相殺する。それが冒険者の暗黙の決まりでした。グレイクもその常識を知っていたため、前衛を担当しているとしても魔法はアレッサがどうにかするべきだと言いたいのです。
「ああ、大丈夫よ。この子、魔法を無効化できるから」
「は?」
「そもそもノン一人でもフォスイールを抑え込めるんじゃない? 包帯でぐるぐる巻きにして」
「包帯?」
「あ、すみません! グレイクさんは情報を共有してくれたのに僕たちはまだでしたね!」
あまりに現実離れしたことを言うアレッサにグレイクは言葉を繰り返すしかありません。そんな彼の様子を見てノンは自分にできることを話していないことに気づき、頭を下げました。
それから彼はグレイクに魔力循環と白い包帯について説明します。特に白い包帯は戦場を縦横無尽に伸びるのでグレイクの射撃の邪魔にならないようにするために実際に使うところ見せました。
「……」
「わかる、わかるわ。何とも言えない気持ちになるわよね」
「?」
全てを聞き終えたグレイクは思わず頭を抱えてしまい、それを見たアレッサがうんうんと腕を組んで頷きます。そんな彼らを見てノンは不思議そうにしていました。
「とにかくお前が魔法を無効化できるのはわかった……魔法に関しては任せる」
「っ! はい!」
「……」
人と馴れ合おうとしないグレイクに頼まれたからか、嬉しそうに笑うノン。そんな彼を見てグレイクは何か言おうと息を吸いました。
「……早く行こう」
しかし、結局、何も言わずに歩き出してしまいます。そんな彼にノンとアレッサは顔を見合わせ、グレイクの後を追いかけました。
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