第261話 属性弓
「……」
ボアレの街を出て数時間ほど経過し、三人は順調に目的地である湖を目指します。右手には昨日、包帯で渡った川があり、その川の上流を目指していました。
(うぅ、気まずい……)
この数時間、ノンたちの間に会話はほとんどなく、彼は気まずい時間を過ごしていました。何度かアレッサに話しかけましたがその反応は芳しくなく、次第に会話もなくなってしまったのです。
しかし、だからといって今日、初めて会話したグレイクに話しかけるのには少し勇気が要ります。彼は人と馴れ合う気がないようでしたので話しかけたら迷惑をかけてしまうのでは、となかなか踏み込めずにいました。
(でも、今のままなのは駄目だ!)
「えっと……あ、グレイクさん!」
「……なんだ?」
勇気を振り絞ってグレイクに話しかけると意外にも彼は話を聞いてくれるようで顔を僅かにノンへ向けてくれました。
「さっきの弓とか矢を出したのってスキルですか?」
「ああ、そうだ」
ノンの質問に隣を歩くグレイクは短く頷きます。冒険者は自分の手札を見せることを躊躇うことが多く、答えてくれないだろうと思っていたので少し驚いてしまいました。
「へぇ! 射撃の精度もすごかったですし、あの緑色の弓で矢を放った時、ものすごかったです! あれって強化装備ですよね?」
「オレのスキルは『弓矢生成』。どんな弓矢でも作れる」
「はぁ!? じゃあ、あなた、強化装備も作れるっていうの!?」
聞き耳を立てていたのでしょう。グレイクの言葉にアレッサが声を荒げました。強化装備はとても貴重な装備であり、その値段はとても高価です。剣の先から少量の水を出す、など戦闘で使えそうにないものであっても一家族が数年間、不自由なく暮らせるほどの値段が付くこともあるとオウサマは言っていました。王都でノエルが見つけた白い指輪も強化装備であり、ノンのお小遣いで買えるほどの値段で売っていることなどほぼありえません。あれは本当に掘り出し物だったのです。
「そうだ。作ったものは数分しか持たないし、作るのにそれなりの魔力を使う。何度も使用できるもんじゃない」
「だからって属性弓をその時の状況次第で使い分けられるってことでしょ? そりゃ、金級にもなるわ」
「属性弓?」
「さっきの風の弓みたいな感じで放った矢に属性を付与できるのよ。例えば、火属性の魔物相手に水の弓で矢を射る、みたいな」
「え、それって……とんでもないですよね?」
アレッサも三属性を操る魔法使いです。相手によって両手に纏う属性を変えることができます。しかし、それはあくまで炎、水、雷――いえ、雷は風の形態変化なので風が弱点の相手だけ。岩や闇は使えないため、それらが苦手な相手に弱点を突くことはできません。
「もちろん、とんでもないことよ」
ですが、グレイクの場合、五属性の属性弓を作成可能。それは苦手属性を持つ相手に的確に弱点を突けるのです。それはどれだけ戦況を有利にできるのか。ノンは魔法を使えないため、その有用性を自覚することはできません。
「でも、あなた、素直に答えたわね。自分のことは話さないと思った」
「一応、合同で依頼を受けたからな。ある程度の手の内を話さなければ連携できないだろ」
「うぐっ」
正論をぶつけられ、アレッサは顔を引きつらせます。しかし、彼女の質問に答えたグレイクの声はどこか嫌そうでした。本当に仕方なく答えたのでしょう。
(やっぱり、この人……)
未だに顔はフードに隠されて見えませんがノンは何となく彼の人となりが分かったような気がしました。
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