第260話 中断
「もういい加減にしてください!!」
「あ? あ、え、ちょ」
「……あれ、は」
今まさにお互いを殺そうとした二人に我慢の限界が来たノンが絶叫しました。彼の声を聞いたアレッサとグレイクは動きを止めて思わず顔を引きつらせます。
「とにかく離れてください!」
いつの間にか彼の頭上には巨大な白い壁が形成されていました。そして、無我夢中で二人に向かって振り下ろします。それを見た二人は慌てて後ろに下がって白い壁をかわしました。素材は軽い包帯だとしても圧縮して壁を作ったのか、地面に叩きつけられた瞬間、揺れるほどの衝撃がアレッサたちを襲い、思わずその場で片膝を付きます。
「ただの決闘ですよね!? なんで途中から殺し合いになってるんですか!」
王都の一件以降、ノンはアレッサほどではありませんが殺気を感じ取れるようになりました。そのため、二人が本気でお互いを殺し合おうとしていたのがわかり、決闘を強制終了したのです。
「だって、この野郎が殺す気で来たから」
「師匠が殺す気で来いって言ったからです! それにグレイクさんは最低限の配慮はしてましたよ!」
緑色の弓で放った風を纏った矢はアレッサではなく、近くの地面に着弾していました。三本の矢を的確にアレッサへ放てるほどの精密射撃ができる彼が、です。人体に直撃したら死んでしまうとわかっているからこそ、地面に向かって放ったのでしょう。
「むぅ」
彼女もそれに気づいていたのか、何も言えなくなってしまい、拗ねてしまいました。
「グレイクさんも! 師匠の攻撃はかすっただけでも死んじゃうんですからあまり挑発しないでください!」
「……」
グレイクも決闘を中断されたのが気に食わないのか、弓を消した後、そっぽを向きます。そんな彼女たちの様子に白い壁を解いてため息を吐きました。
「とにかくグレイクさん、僕はともかく師匠の実力はわかりましたか?」
「まぁ……前衛だってのは納得した」
「それはよかったです。道中にも魔物が出るかもしれません。フォスイールと戦っている間も襲われる危険性があるので前衛の師匠がいた方が安全だと思います」
「……はぁ、わかった」
ノンの説得に彼は渋々といった様子で頷きます。アレッサはもちろん、白い壁を地面にめり込ませたノンも普通ではないと思ったのでしょう。
「じゃあ、改めてよろしくお願いします。師匠も、ほら」
「……よろしく」
「……ああ」
中途半端に決闘を中断してしまったからか、二人の仲は最悪な状態です。顔を合わせようとすらしない金級冒険者たちにノンは頭を抱えたくなりました。
「とりあえず、フォスイールのいる湖に向かいましょう。師匠、あの山の麓に湖があるんでしたっけ?」
「ええ、そうね。周囲を警戒しながら日が暮れるまで歩いて手頃なところで野営しましょ」
「わかりました。グレイクさんもそれでいいですか?」
「構わない」
ノンの質問にぶっきらぼうに答えるグレイク。アレッサも不機嫌だと言わんばかりに腕を組んでいるため、これ以上の会話はしない方がいいと判断したノンは目的の湖がある山を目指して歩き出しました。
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