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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第四章 狩人さんは想い人に会いたい
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第254話 塩漬け

「ホントにさくっと終わっちゃったわね」

「はい……どうします?」

「どうしようかしらね」


 次の日、早朝から街の外に出た二人は対象の魔物を倒しました。しかし、偶然にも魔物たちが近場にいたため、お昼前に全ての依頼を終えてしまったのです。じゃあ、次の依頼、と行きたいところですがこれ以上はこの街の冒険者に迷惑をかけてしまう可能性があり、二人はどうしたものかと昨日、話を聞いてくれた受付嬢に相談することにしました。


「うーん……あ、実はお二人と同じことを相談しに来た方がいまして塩漬け依頼のことをお話させていただきました」

「塩漬け依頼?」

「長期間、解決されてない依頼のことね。本当は討伐して欲しいのに強い上に緊急性の低い依頼とかがたまになるの」

「こちらがその依頼です」


 ノンにアレッサが補足している間に受付嬢が依頼票を提示しました。確かに依頼が受領された日は今から数年も前の日付です。


「討伐対象は『フォスイール』です」

「え、マジ?」


 討伐対象を聞いたアレッサは面倒臭そうな顔をして依頼票を読み始めました。そして、受付嬢の言葉に嘘がないとわかり、深いため息を吐きます。


「師匠、それはどんな魔物なんですか?」

「フォスイールは厳密には魔物じゃないの。ただの動物……いや、魚類? ちょっと面倒な生態があって酷い時はこうやって冒険者が駆除することになってるわ」

「どんな生物なんです?」

「こんな感じですよ」


 ノンの質問に答えたのは受付嬢でした。さらさらと何も書かれていない紙に絵を描き始め、一分と経たずに二人に紙を見せます。


(あ、鰻だ、これ)


 そこに書かれていたのは真っ黒な細長い生物――前世でいう鰻に似た生物でした。しっかりと絵の鰻の周りに可愛らしい字で『うねうね』、『ぬるぬる』と書かれているため、間違いないでしょう。


「あら、上手いのね」

「えへへ、暇なのでよく落書きして時間を潰してるんです。はい、どうぞ」

「あ、どうも」


 絵を褒められた彼女は嬉しそうに笑ってそのままノンに鰻の絵を渡しました。記念としてあげる、ということなのでしょう。


「この鰻ってどんな風に面倒臭いんですか?」

「ウナギ? えっと、ほらここ。目が四つあるでしょ。これを同時に潰さないと無数に分裂して一目散に泳いで逃げるの。そうしたら生態系が壊れちゃうからやばいのよね」

「分裂?」

「そう、分裂。たまに泳いでて木の枝で一部の目が潰れて大量に増えちゃう、みたいなことが起きるのよ」


 『一回、分裂した後、増えた個体も含めてもう分裂しないからまだマシだけど』と言いながらもアレッサは面倒臭そうに依頼票をテーブルに放りました。自分で目を潰して大量に分裂し、生態系を破壊する。確かにはた迷惑な鰻です。何でも屋である冒険者が駆り出されて駆除するのも納得でした。


「でも、普通は分裂が起きた後に依頼が出るはず……塩漬け依頼になる理由がわからないわ」

「あ、実はこの討伐対象のフォスイールは特別でして」

「特別?」

「はい、でかいんです。とっても」

「……ん?」


 受付嬢の言葉をすぐに飲み込めなかったのか、アレッサは首を傾げてノンに視線を向けます。自分の聞き間違いを疑ったようでした。


「多分、聞き間違いじゃないですよ……」

「え、でかいってどういうことなの?」

「本当に大きいんです。全長は約十メートル。特殊個体だからか、攻撃的で水魔法も放ってきます」

「ほぼ魔物じゃないの! 魔石でも飲み込んだんじゃない!?」


 実は魔道具の原料になる魔石ですが、普通の動物が飲み込む事例も少なくありません。通常であればそのまま排泄物と一緒に外へ出ますがたまに体内へ吸収してしまう個体もおり、魔物ほどではありませんが体に変化が現れることがあります。今回のフォスイールの場合、体が大きくなり、水魔法を使えるようになったようでした。


「おそらく……ただ、テリトリーの湖からは出てこない上、近づかなければ被害もなく、体が大きいおかげで泳ぐだけでは目は潰れなさそうだったのでここまで放置されています」

「だからってここまで放置されるなんて……王都に報告は?」

「したんですけど、魔族との戦争に人手が取られているようで何かが起こるまでは放置することになりました。

「もう、魔族嫌い……」

「師匠……」


 アレッサは顔を覆い、魔族に対する恨みを口にします。彼女は何かと魔族と関わることが多く、ノンは少しだけ同情してしまいました。

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