第251話 条件
「師匠」
「んー?」
次の街に向かって歩き始めた二人ですが、その道中は基本的に暇です。もちろん、最低限の警戒はしていますがノンの魔力感知の範囲が広すぎるせいで王都で苦しめられた腕輪のような魔道具がない限り、不意打ちは基本的に効きません。また、アレッサも殺気を感じ取るのが上手いため、たまに魔力感知の範囲外にいる魔物の存在を察知することもあります。
そのため、色々な話をしながら暇を潰すのが恒例となっていました。アレッサがノンに教えたいことができたら講義が始まったり、今日の晩御飯は何にしようか、と献立を決めたり、とその話題は多岐に渡ります。
「仲間を集めるって話ですがどんな人たちがいいとかあります?」
「どんな人? あー、役職のこと?」
アレッサの確認するような言葉にノンはコクリと頷きました。魔族と戦うためにノンとアレッサは仲間を集めることにしたのですが、具体的な話はまだしていません。迷宮都市に行くのも冒険者が多いから、という単純な理由です。
「そうね……私が前衛。ノンは中衛がいいと思うの」
「僕、中衛なんですか?」
「包帯で魔法をキャンセルできるし、他の仲間のフォローにも入れるでしょ? 正直、今回の魔族との戦いでノンの汎用性の高さを再認識したの」
「汎用性の高さ……」
ノンの手札は主に二つ。魔力循環による肉体強化と白い包帯です。特に白い包帯は攻撃、防御、移動、阻害など様々な用途で使用され、魔族との戦いでも大いに活躍してくれました。そのため、ノンはどんな場面でもすぐにフォローに入れる中衛がいいとアレッサは判断したようです。
「なるほど、わかりました。じゃあ、新しく募集する仲間は後衛ですかね」
「そうね……純粋な魔法使いか、弓使い? 私も後衛にはあまり詳しくないの」
本当は後衛に配置される魔法使いなのに、という言葉をグッと飲み込んでノンは前世でやったゲームを思い浮かべます。確かにアレッサの言うとおり、後衛になりえそうなのは純粋な魔法使いと弓使いでしょうか。
「あとは前衛にタンクが欲しいわね。そうすれば私も攻撃に集中しやすいから」
「回復役は……あ、回復魔法ってないんでしたっけ?」
「回復魔法? 前にも言ったけどそんな夢みたいな魔法あるわけないでしょ。魔法だって万能じゃないの」
ファンタジー世界でよく登場する回復魔法。しかし、この世界ではその存在は確認できておらず、傷を癒す方法は薬草を煎じた塗り薬で時間をかけるしかありません。ノンも右腕の刺し傷が治るのにそれなりに時間がかかりました。
「じゃあ、後衛とタンクの人を中心に探すって感じでしょうか」
「役職に関してはね。でも、やっぱり私たちの事情を知ってもなお、一緒に来てくれる人……そもそも事情を話してもいいって思える人じゃないと駄目」
「そう、ですよね……」
ノンの家族を探すために人間の国を巡ること。魔族と戦うことになること。少なくともその二つを許容してくれる冒険者でなければなりません。アレッサはスムーズに仲間になってくれましたが自己責任が伴う職業である冒険者は慎重な人が多く、魔族と戦うことになると聞けば身を引いてしまうでしょう。
「まぁ、仲間に関してはおいおいってことで」
「はーい。あ、そういえば今日の晩ご飯ですが」
ひとまず、集めたい仲間のことを聞けたノンは素直に頷き、次の話題に移ります。それから二人は取り留めのない話をしながら歩き続けました。
感想、レビュー、ブックマーク、高評価よろしくお願いします!




