第250話 目的地
魔族との戦いで判明しましたがヒュドラの猛毒を克服してからノンの身体能力は全体的に向上していました。火事場の馬鹿力という可能性もあり、完治したノンはアレッサと組手をしてみましたがやはり彼女から見てもノンは強くなっているようです。
「原因はわかるの?」
「いえ、いつの間にか。毒を克服できたのも不思議で」
あの時、ただ生きることしか考えていませんでした。そのため、自分の身に何が起こったのかノン自身も把握しておらず、アレッサに相談したのも何かわかることがあるかもしれないと考えたからです。
「確か精霊王たちの『ステータス』っていう魔法も弾いたんだっけ? 相変わらずよくわからないわ」
しかし、その結果は結局、不明。ノンの体質に関しては明確な答えを出せませんでした。
「まぁ、強くなることに越したことはないわ。とにかく、今は打倒魔族を目指して頑張りましょ」
「はい!」
「じゃあ、そろそろ出発の準備を始めましょうか。目的地は遠いから少しでも前に進まないと」
そう言いながらアレッサは荷物を置いてある場所に向かいます。ノンもその隣に並び、広げていた荷物をまとめ始めました。
「次の街は迷宮都市、でしたっけ?」
「ええ、そうよ」
その最中にノンは今後の予定を確認するためにアレッサに話しかけます。彼が次の目的地を聞いたのは二週間も前のこと。しかし、まだ傷が完治していなかったため、詳しい話を聞きそびれていたのです。
「どんな街なんですか?」
「街のど真ん中に大きなダンジョンがあるの。ハーニンド大陸の中でブレゾニアの次に大きな街ね」
「へぇ……でも、前に地図で場所を教えてもらいましたけどすごく遠くないですか?」
「まぁ、ハーニンド大陸の中でもかなりに東側にある街だからね」
そこで荷物をまとめ終わったアレッサは立ち上がり、ノンへと手を差し伸べました。それから程なくしてノンも準備が完了し、彼女の手を取って腰を上げます。
「馬車を使って二か月。歩いたら四か月かからないくらいかしらね」
「わぁ……本当に遠い。盗賊が多い、とかじゃないですよね?」
「今回は単純に距離が遠いのよ。特に王都と東部を横断するようにそびえ立つハーニンド山脈が面倒でね。一応、登山路はあるんだけど険しい山道だからどうしても時間がかかるの」
彼女はそう説明しながら前方を指さします。彼らがいる場所はまだ王都からそこまで離れている場所ではありませんが微かに大きな山脈が見えていました。
「あれを、登るんですか?」
「そうよ。やばいでしょ」
「やばい、ですね……」
「一応、海路もあるんだけど今は魔族との戦争のせいで運航を見合わせてるらしいの。海上で魔族に襲われたら終わりだからね」
魔族は翼を持つ個体が多く、ノンたちが戦った男も地下水道のせいで高くは飛べませんでしたが空を移動してかく乱してきました。もし、王都の上空に逃げられたらもっと苦戦していた上、王都全域に被害が出ていたでしょう。
「そうなんですね……でも、どうして迷宮都市に行くんですか?」
「単純に仲間を集めやすいからよ。あそこは王都以上に冒険者が集まる街だから。それにその影響で王都では知られてない情報もあったりするの。魔族のことを調べるのにもってこいでしょ」
「確かに」
「その間に色々な村や街があるからそこで冒険者ギルドによって依頼を受けながら行くわ。それを考慮するとさっきの日数がかかるってわけ」
つまり、これからはひたすら東に向かいながら道中にある街に寄って依頼を受け、ついでにノンのおうちや仲間、魔族に関する情報を集めるということでした。
「さ、ノンの体も治ったってわかったから前のペースに戻すわ」
「はーい」
こうして、ノンとアレッサは迷宮都市を目指して歩き出したのです。
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