第244話 冤罪
(な、にが……)
まるで、その場で回転したように回る視界。両隣にいるアレッサたちの温もりが遠ざかっていく感覚を覚えます。そのせいで包帯のコントロールも上手くできず、予定以上に速度が上がってしまいました。
「ノン?」
「あ、れ……なんで……」
様子のおかしいノンに声をかけるアレッサ。しかし、強い眩暈に襲われた彼はそれどころではなく、狭まる視界の中、必死に包帯を操って目的地に向かいます。
「ッ!? ノン、止まって! あなた、限界なのよ!」
「げ、んかい?」
やっと、ノンの異変に気付いたアレッサが叫びました。
盗賊の不穏な動きを王都で報告するため、早朝に出発し、王都に着いてからもアリスやノエルと出会い、休む暇はほぼありませんでした。
なにより、地下水道での戦闘は負担がかかりすぎたのです。瀕死の状態から復活したこともあり、これまで動けていたのも不思議なほどでした。
「ぁ、やば……」
とにかく止まらなければ、と包帯を操作しようとしますが眩暈が強くなり、ノンの意識はフッと消えてしまいました。
「え、ちょっとノン!?」
ガクリ、と気絶したノンにアレッサは悲鳴のような声を上げました。現在、三人は絶賛、王都の上空を飛んでいる最中。基本的にノンの包帯頼りの飛行なので彼が気を失ってしまったら制御できる人がいなくなってしまいます。
「あら」
「あなた、呑気すぎない!?」
気絶しているせいで首ががくがくしているノンを見てノエルが驚いたような声を漏らしました。しかし、さほど焦っている様子もなく、思わずアレッサはツッコミを入れてしまいます。
「ちょ、ちょっと! このままだと――」
その間も三人は空中を進み続けていたため、アレッサが視線を前に戻した時、すでに騎士団が拠点にしている建物が目の前まで迫っていました。喧嘩殺法魔法を振り回して軌道修正する暇はありません。
「こなくそっ!」
アレッサはノンとノエルを右腕でまとめて抱きかかえ、建物に背中を向けます。そして、タイミングを合わせて炎を纏った左拳で裏拳を放ちました。
タイミングはドンピシャであり、ドゴン、という音と共に騎士団の建物が粉砕。そのまま三人は建物の中へと突っ込みます。そのまま何度か空中で拳を振るい、フラフラと勢いを殺して適当な場所へ着陸しました。
「な、なんとかなった……」
「師匠さん、すごい」
「これでも金級の冒険者だから……って」
パラパラと破片が落ちる中、アレッサは顔を上げて――引きつらせます。そう、ここは騎士団の拠点。建物を破壊して中に侵入した場合、中にいた騎士たちはどう思うでしょう。
「賊が入ったぞ! 全員、臨戦態勢!」
「おい、子供が一緒だ!」
「あの風貌……憲兵たちから共有されたマジカルヤンキーと同じ特徴だ!」
そう、侵入者と認識されます。しかも、彼女たちが落ちたのは丁度、騎士たちが行き交う中央ホール。それに加え、なにか事件があったらしく、普段ならそこまで多くないはずの夜でも無数の騎士が在中していました。
「……おい、あの子、もしかして」
今にも戦闘が始まりそうな雰囲気の中、一人の騎士がノエルを見て声を震わせます。そして、この場にいる騎士たちが全員、彼女の正体に気づきました。
「な、何故、お前がその方と一緒にいる!?」
「え、ええ?」
「まさかお前が攫ったのか!」
「はぁ!? そんなわけ――」
「――話は捕まえてから聞く! 全員でかかるぞ!」
聞く耳すら持ってくれない騎士たちにアレッサは唇を噛みます。実は今もなお、彼女の腰にはノンの包帯が巻きついていました。そう、彼が寝ている間も白い包帯の形状を保てるため、彼が起きるまでずっと包帯はそのままなのです。この状態で無数の騎士とノンとノエルを守りながら戦うのはマジカルヤンキーである彼女でも無理がありました。
「……師匠さん、行って」
そして、そんな彼女に話しかけたのはいつの間にか気絶しているノンの頭に手を置いていたノエルでした。
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