際242話 決着
魔族が拳を放つ。ノンはそれに腕を当てて後ろへ受け流す。そして、バランスを崩した魔族へとアレッサが拳を叩き込む。
「どうなってやがる!?」
その一連の流れを何度か繰り返した頃になって魔族はやっとノンに普通の打撃が効かないことを悟り、後ろへと下がりました。
「うっ」
もちろん、ノンも無事ではありません。魔族の攻撃を受け流す度、ビリビリとした痛みが腕に伝わり、今にも折れてしまいそうでした。
特にノエルを守る時にヒュドラの毒刃を受け止めた右腕。包帯を巻きつけて保護しているとはいえ、まだ手当すらしていません。そんな腕で魔族の攻撃を受け流していれば痛みも走り、傷口が広がって出血も増えます。
「……」
しかし、ノンは構えを解きませんでした。生きていれば後でいくらでも治療できます。でも、今、魔族に殺されたら何も残りません。だから、ここが頑張りどころ。ここが踏ん張りどころなのです。
「くそったれが!」
攻撃が思うように通らないことに腹を立てたのか、魔族はノンへと突進しながら周辺に大量の魔力を放出しました。その数は五。
「ッ――」
それを見たノンは咄嗟に白い包帯を伸ばして五つの内、両端の魔力を先端の球を膨張させて吹き飛ばしました。残りは三つ。膨張させた球をまた一気に凝縮させてその二つの球をぶつけ合い、巨大な球に変形。そして、勢いよく膨らませて三つの魔力をまとめて吹き飛ばします。
「死ねぇ!」
ですが、その隙に魔族がノンに肉薄してきました。受け流すために構え直す暇はありません。両腕をクロスしてガードしようとした刹那、ぐいっと首根っこを掴まれて後ろへ投げられます。彼の視界に映ったのはトレードマークのとんがり帽子とはためくローブ。
「てめぇこそなぁ!」
ノンを後ろへ投げたアレッサはその手に稲妻を纏わせ、魔族の拳とぶつけ合います。その瞬間、凄まじい風圧が部屋中に吹き荒れ、アレッサと魔族は同時に弾かれたように後ろへ跳びました。
「ノン!」
「ッ――」
「このっ!」
アレッサの声に彼は咄嗟に膨張させていた球を一気に振り落とします。その下にはアレッサと拳をぶつけ合ったせいでバランスを崩している魔族。もちろん、このまま押し潰されるつもりはないのか、彼は翼をはためかせて白い球から逃れようとします。
「逃がすか!」
しかし、その直前、球から二本の包帯が飛び出して魔族へと絡みつきました。そのせいで逃げられなかった魔族はそのまま白い球に押し潰されました。それからノンは全力で白い包帯を操作して彼を地面に――紫色の魔法陣に押さえつけます。
「ノエル!」
「ッ!」
ノンの言葉にノエルは待っていましたと言わんばかりに前に飛び出して紫色の魔法陣に触れました。そして、魔族が転移してきた時と同じように輝き始めます。
そう、ノンがノエルにお願いしたのは合図を出したら転移魔法陣を起動させること。魔族は不死。倒せないのなら元居た場所へ転移させてしまえばいい。それがノンの考えた作戦でした。
「どっか行って!」
ノエルはアレッサほどではありませんが魔法の才能がありました。解析に時間がかかってしまいましたが正常に魔法陣は起動しています。
「ッ!? そういうことか!」
すでにノンとアレッサは魔法陣の上から移動しており、残っているのは自分と己を押し潰している白い球体のみ。魔族は慌てて白い球体の下から逃げようとしますが必死にノンが押さえつけたおかげで数秒ほど時間を要しました。
「せっかく王都をぶっ壊せそうだったのに! あの野郎と一緒で……ああ、そうか!」
白い球体から這い出た魔族は悪態を吐いていたのに何かに気づいたのか、その顔を輝かせました。
「やっとわかった! てめぇら、あの野郎の知り合いだろ! 一年前、この俺様の邪魔をしたあの野郎!」
「ッ……それって師匠のこと!?」
一年前。魔族。その単語だけでノンもアレッサも彼こそがアレッサの師匠と戦った魔族だということに気づきました。
「師匠! はは、あの野郎、パッと消えやがったくせにきっちり弟子を育ててやがったんだな! こりゃ、いい! 今度こそ、俺様がてめぇらをぶっ殺して――」
そこで魔族の姿が消えてしまいます。転移魔法が発動して元居た場所に戻ったのでしょう。
「……」
こうして、衝撃的なことを言い残したせいで後味が悪いまま、魔族との戦いが終わりを告げたのでした。
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