第241話 受け流し
ノンとアレッサは頑丈な魔族に対して魔力を直接叩き込むという荒業でダメージを与えられます。しかし、彼らの予想以上に魔族の耐久力と再生力が優れており、あれだけ攻撃しても未だにピンピンしていました。
それに対し、ノンは人攫いとの戦いやヒュドラの毒にやられてしまったせいで体力が削られており、顔を歪めています。
アレッサも燃費のいい喧嘩殺法魔法を使っていますが魔力残量が気になり始めました。このまま戦い続けてもノンたちがガス欠を起こしてしまいます。
「……」
ノンはどうするべきか考えながらチラリとノエルの方を見ました。彼女は不安そうな顔をしながらもしっかりとノンたちを観察しており、ノンと目が合うとコクリと一つだけ頷きます。
「よそ見か?」
そんな彼に気づいたのか、魔族は笑いながら声をかけてきました。あれだけやられたのにまだ余裕の顔を見せているのはノンたちでは自分を倒せないと思っているからでしょう。
「師匠」
しかし、そんな魔族を無視してノンはアレッサに視線を向けます。そして、彼女と目が合った後、再びノエルを見ました。
「……ああ、なるほど」
それで全てを悟ったのでしょう。アレッサは納得したような声を漏らし、再び構えを取ります。詳しい説明はしていませんが彼女なりに作戦の内容を把握し、何とかしようとしてくれているようでした。
(なら、僕は……)
体力の回復を促すため、深く呼吸を繰り返した後、アレッサの前に出て包帯を伸ばします。残り体力の少ないノンよりもアレッサの方が攻撃するのに適しているでしょう。ノンが防いで、アレッサが攻撃する。つまり、これまでと何も変わりません。
「……」
ですが、ノンは目を鋭くして魔族を睨みつけます。そして、包帯の先端を重ねて二つの球にしました。
とにかく魔族の攻撃の中で危険なのはあの闇魔法です。これまで包帯は防御やサポートに使っていましたがそのせいで対処が間に合わず、魔法を完成されてしまいました。あんな高威力の魔法を撃たれ続けたらノンもアレッサもすぐにやられてしまいます。そのため、包帯は魔族の魔法を魔法の無効化するために専念させる。それがノンの考えでした。
「まずはてめぇからだ!」
それを見た魔族は魔力を放出した後、ノンへと突っ込んできます。まだ魔法の無効化の仕組みはばれていないようですが、ノンが魔法をキャンセルできることはわかっているため、早めに倒してアレッサに魔法を撃ちたいのでしょう。
「すぅ」
魔族が接敵する前に短く息を吸いました。そして、先端を球状に維持しながら姿勢を低くして包帯を服の上から腕に巻きつけます。更に魔力を注ぎ込み、構えました。
それを見た魔族は一瞬だけ目を細めた後、これまでと同じように右拳を振るいます。魔法は得意なようですが、他の攻撃は単調であり、そこまで複雑な戦闘経験はないのかもしれません。
しかし、今までは拳をぶつけて相殺しようとしたり、包帯をアンカーにして体を支えようとしましたが体重の軽いノンでは魔力循環があっても受け止めきれませんでした。魔族の身体能力の高さがノンの肉体強化を超えているからです。
「ッ!」
だからこそ、これまでとは違うアプローチ。魔族の拳に対してノンは重心を左足に預け、そっと右腕をその拳に当てます。そして、そのまま体を回転させるようにして受け流しました。
「――は?」
少し右腕を拳に当てただけで魔族の体が滑るようにノンを通り過ぎました。
ノンは精霊の国で修行した時、オウサマから体術を習いました。その際に攻撃の受け流し方も教えてもらったのですがオウサマも驚くほどノンは攻撃を受け流すのが上手かったのです。
「ドンピシャだなぁ!」
そして、受け流された魔族の頬にアレッサの拳が叩き込まれたのでした。
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