第229話 腕輪
「ッ!?」
「わっ」
不気味に光るナイフを頭を傾けて回避したノンですが、男の速度がこれまでとは比べ物にならないほど早くなっていることに気づき、目を見開きます。そして、慌てて突き飛ばしたせいで尻もちをついているノエルを抱えて後ろに下がりました。あのままでは隙を突かれ、彼女が捕まってしまう可能性があったからです。更に時間を稼ぐために包帯を前に伸ばして男をけん制して近づけないようにしました。
「おいおい、そんな攻撃当たんねぇぞ!」
包帯の猛撃をケタケタと笑いながら避ける男。骨が折れているはずなのにそれを感じさせない身のこなし。確実に奴は強くなっています。
「まさか……」
腕輪から感じていた嫌な気配が男の全身から漏れていることを察知した彼は自然とそれに視線を向けます。あの腕輪は物を消せるだけでなく、装備者の身体能力を向上する効果があるようでした。不完全だったとはいえノンの拳と拮抗したのはあの時、すでに腕輪で体を強化していたのでしょう。
「今度こそ死にな!」
そこまで考えたところで男が包帯をかいくぐってノンへと迫ります。その動きは確かに速い。しかし、それでも対応可能なレベルだったため、ノンは冷静に男の動きを読み、ノエルを連れてナイフをかわし続けます。
(ノエちゃんをどうにかして遠ざけないと)
ですが、中途半端に距離を取っても今の男には意味がありません。むしろ、ノエルに危険が迫っている時に間に合わない可能性もあり、ノンは奥歯を噛みしめました。
「ノンくん……」
ノエル自身、自分がいるせいでノンが自由に動けないことを自覚しているのでしょう。申し訳なさそうな顔をしながら大人しくノンに身を委ねていました。下手に動いて事態を悪化させるわけにはいかないからです。
「よっと!」
包帯を軽くジャンプして避けた後、男は後ろへ大きく下がりました。そして、着地したのは大柄の男が使っていた大きな棍棒のそば。そのままそれを拾った彼はノンたちに向かって全力で投げました。
「ごめん!」
「むぎゅっ」
凄まじい勢いで飛んでくる棍棒を見て移動している時間がないと判断したノンはノエルの頭を押さえつけて強制的に姿勢を低くさせます。更に自分は包帯を天井に突き刺して上に逃げました。
「離れたな!」
「丸まって!」
「ッ……」
上下に逃げた二人の間を棍棒が通り過ぎた直後、男がノエルに向かってナイフを振りかざします。もちろん、それをノンが許すわけもなく、ノエルに包帯を巻きつけて乱暴に後ろへ放り投げました。いきなり投げられた彼女は頭を抱えるように丸まり、宙を舞います。
リーダーの男はそんな彼女の後を追いかけますがノンは天井から包帯を外し、その先端を男に向かって雨のように降らせました。男の動きを止めた隙にノエルを回収するつもりだったのです。
「はっ!」
ですが、男はその雨を軽々とかわしてしまいました。このままでは空中にいるノエルが捕まってしまう。ノンは地面に突き刺した包帯の一本を操作して男の後を追いかけます。この速度なら男を追い越してノエルを助けられる。そう確信した時でした。
「――かかったな?」
ぐるりと反転してノンの方を振り返ったのです。そう、男の狙いは最初からノエルではなくノン。いきなり向かってくるとは考えもしなかったノンの心臓にその手に光る不気味なナイフが迫りました。
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