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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第228話 ナイフ

 拳に伝わる肉を打つ感触。更にボギリ、と骨が砕ける音がノンの耳に届きます。アレッサの言葉通りに放ったその一撃はまさに必殺。それは攻撃したノンですらまともに受けたらただでは済まないとわかってしまうほどの威力でした。


「ッ――」


 ノンの渾身の一撃にリーダーの男は成すすべもなく、後方へと吹き飛ばされます。そして、壁に激突し、そのまま倒れ伏しました。その際に奴が持っていた剣が可視化され、カランという音と共に地面に転がります。動く気配はないため、気を失ったのでしょう。


「お、おいおい……マジかよ」


 リーダーの男が気絶したからか、大柄の男の姿が現れました。これであの厄介な魔道具は使えない。地下水道に戻れば地上に戻る梯子も見えるでしょう。


(あとはこの人だけ!)


 呆けている男に向かってノンは包帯を伸ばし、棍棒に巻き付けます。武器が取られると思ったのか、大柄の男は慌てて得物を掴み直しました。


「ふんっ」

「あぶね!」


 しかし、残念ながら魔力循環で強化されたノンに敵うはずもなく、すんなりと棍棒を奪います。そして、それを天井付近まで持ち上げて一気に振り下ろしました。ブン、という風切り音と一緒に落ちてくる棍棒に男は慌てて横に飛んで回避します。


「はぁ!」

「が、は……」


 ですが、男が飛んだ先に移動していたノンは再び拳を握りしめ、先ほどと同じように男をぶん殴りました。全力の一撃によって大柄の男はリーダーの男と同様に壁まで吹き飛ばされ、そのまま倒れます。


「……ふぅ」


 数秒ほどジッと待ちます。そして、男たちが立ち上がらないのを確認した後、ノンは深く息を吐きました。一時はどうなることかと思いましたが無事に男たちを倒すことができてホッとしたのです。


「ノンくん!」


 その束の間、出口付近で戦いを見守っていたノエルがノンへと駆け寄りました。人攫いに遭ったと聞いた時も態度を変えなかった彼女ですが、さすがに不安だったのでしょう。そのままの勢いでノンに抱き着きました。


「わっ、危ないよ」

「ノンくんの方が危なかった……無事でよかった」

「……うん、ありがとう」


 彼女の言葉にノンは男たちに勝ててよかったと改めて思います。もし、負けていたら彼女はどんな目に遭っていたのか。結局、奴らの目的はわからないままだったのでその詳細は不明ですがきっと、いいことはなかったでしょう。


「へ、へへ」


 その時、震えながらも確かな笑い声が聞こえます。そちらへ視線を向けるとリーダーの男は殴られた腹部を押さえながら立ち上がったところでした。


「まだやるんですか」

「ああ、仕事だからなぁ……ごぼっ」


 手応えは確かにありました。骨も折れているはず。その証拠に内臓が傷ついているのか、ノンの問いかけに答えた男の口から血の塊が吐き出されます。


「さすがに、四の五の言ってられねぇな」


 それなのに男はしっかりと立ち、腰の後ろへ右腕を回しました。そして、その手で腰に付いている鞘から小さなナイフを引き抜きます。


「そ、れは……」


 地下水道でノンに斬りかかった時とは装飾が違います。そして、なによりそのナイフから感じるおぞましい気配にノンは言葉を失いました。


「さぁ、これでお前もおしまいだ」

「ッ……」

「きゃっ」


 紫色に輝く刃をノンに見せながら男は笑い、一瞬にして彼の前に現れます。咄嗟にノエルを突き飛ばし、包帯で壁を作りました。


 カン、という軽い音が響き、男のナイフを防ぐことはできましたが奴の言うとおり、あの刃で斬られるのはマズイと本能が訴えてきます。具体的にどんなことが起こるのかわかりませんがノエルはもちろん、ノン自身もあれに触れないように立ち回る必要があるでしょう。


(とにかく、あのナイフをどうにかしないと!)


「おら、どんどん行くぞ!」


 形勢は逆転したはずなのに追い詰められたように冷や汗をかくノンに対し、リーダーの男は勇ましく吠えながら突っ込んできました。

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