第225話 通路
「……」
痩せぎすの男から話を聞き終えたノンはノエルを連れて休憩室にやってきました。そこは相変わらず簡易的なトイレやゴミ箱が置いてあるだけです。
「……あった」
無言のまま、彼はゴミ箱を脇に置いた後、その後ろの壁に触ると僅かに他の壁と感触が違いました。そして、塊にした包帯で殴ると壁が崩れて隠された通路が現れます。
「これがあの人が言ってた」
「うん」
ノンとノエルは先の見えない通路を見て思わず生唾を飲み込みました。この先に何が待っているかわからないからです。
痩せぎすの男は怯えながらも主に二つのことを教えてくれました。
まず、あの腕輪のこと。どうやら、彼らは闇ギルドに属している盗賊であり、高額の報酬金に釣られてノエルを誘拐する仕事を受けたそうです。その際に役に立つからと渡されたのがあの魔道具。様々なものを一時的に消すことができるそうです。姿や魔力、建物などそれは多岐に渡りますが所有者のことを仲間と認識している人は消せないとのことでした。
そして、彼らの目的。雇われた身であるため、雇い主の思惑はわかりません。ですが、攫ったノエルを地下水道に隠された通路を通り、その先の部屋まで連れて来るように、と命令されたようです。その際にあの腕輪を支給されたと言っていました。そして、その魔道具を使い、地上に出るための梯子を消しているため、魔道具を破壊するか天井を強引に破壊するしかありません。
(天井を破壊するのはもってのほか。地上にいる人たちに被害が出るかもしれないし、最悪、天井が崩落して僕たちが生き埋めになる可能性もある)
白いドームを使えば一時的に凌ぐことができるでしょう。しかし、瓦礫に生き埋めになってしまったら脱出するのは困難であり、ノエルをそんな危険な目に遭わせるわけにはいきませんでした。
――きっと、リーダーならあの通路の先で待ってる。俺なら全部、喋るってわかってるだろうさ。
痩せぎすの男はそう言うと目を閉じ、気を失ってしまいました。思った以上に天井に叩きつけられたダメージが残っていたようです。何度か水をかけても起きなかったため、これ以上の情報を得られないと判断したノンはビッグラットに食べられないように結界石を使った後、男を放置してきました。
また、このまま水路を適当に歩いてもあの魔道具がある限り、通った道を消されてしまい、方向感覚を失わされて元来た場所に戻されてしまうでしょう。実際に経験しているため、対策のしようがなく、体力があるうちに隠された通路の先に行ってあの魔道具を破壊するほかありません。
「……行こう」
「うん」
ノンはノエルに手を差し出し、頷いた後、彼女はその手を取ります。そして、ほぼ同時に足を踏み出して通路へと入りました。
「……」
通路は狭く、子供であるノンたちが並んで歩くのがやっとです。大人なら一人ずつしか通れないでしょう。しかし、どういうわけか灯りはないのに完全な暗闇ではなく、目を強化しなくても隣を歩くノエルの顔が見えるほどには明るい通路でした。
「あっ」
数分ほど歩いたところで前方が少し明るくなっているのに気づきました。通路の終わりが見えてきたのです。
「……これは」
通路を通り抜けた彼らを待ち受けていたのは前世でいう体育館ほどの広い空間でした。
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