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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第224話 尋問

「じゃあ、十数えますねー」

「ま、待て、話す! 話すから!」

「十」


 ノンが子供特有の可愛らしい声で数を数え始めた時、しゅるり、という音が男の耳に滑り込んできました。それだけで彼はビクリと肩を震わせます。


「九」


 視線を横にずらせば真っ白な包帯がゆらゆらと動いているのが見えました。そして、それはゆっくりと男の頭へと絡みつき始めます。まるで、獲物を見つけた蛇のように。


「八」

「ま、待って……」


 男はガタガタと震えながら声を漏らしますが包帯は止まりません。もし、ここが病院なら頭の怪我を保護しているように見えるでしょう。


「七」

「ぁ……」


 しかし、位置がズレたのでしょうか。包帯によって男の右の視界が黒く塗り潰されます。そのせいでノンの顔が見えなくなってしまい、男の心臓がドクンと跳ねました。


「六」

「おね、が……」


 今度は首。きゅっと少しだけ締められたのでしょうか、息が苦しくなったような気がします。酸素を求めて彼の呼吸はどんどん早くなっていきますがいつまで経っても息が楽になることはありませんでした。


「五」


 頭や首だけではありません。手や足、胴体。男の体は少しずつ少しずつ白い布に覆われ、次第に身じろぎすらできなくなり始めていました。それに気づいた瞬間、男は我慢の限界に達し、話をしようと口を大きく開けます。


「四」

「まっ――ッ!?」


 ですが、その直後、包帯が彼の口を覆ってしまいました。これでは話せない。何も喋られない。それは、つまり、あの瓦礫と同じように――。


「~~~~~!!」

「三」


 もごもごと必死に何かを訴える彼ですがノンはそれでもカウントダウンを止めません。身動きもできない。秘密も話せない。何もできない。それが更なる恐怖を招き、男の目からポロポロと涙が零れ始めました。


「二」


 そして、最後まで残っていた男の左目が包帯に覆われます。視界が真っ暗になり、男はパニックを起こして必死に体を動かそうとしますが白い包帯がそれを許さないと言わんばかりにそれを阻害します。締め付けが強くなったことにより、瓦礫が砕ける光景が思い浮かび、全身が粉々になる姿でも想像したのでしょうか。男はピタリと動きを止めました。


「一――なーんちゃって。怖かったですか? じゃあ、大人しく話を……あれ?」


 ノンが包帯を解きながら明るい声で話しかけた時、よほど怖かったのでしょう。すでに彼は気絶していました。可哀そうに涙や鼻水だけでなく、粗相までしている始末。包帯に黄色い液体が少しずつ広がっていくのを見てノンは思わず顔をしかめました。


「本気で殺すわけないじゃないですか」

「いや、あれは怖い。ノンくん、恐ろしい……」


 その部分を遠ざけながら情けない男を見下ろしてため息を吐く彼でしたが傍にいたノエルはドン引きした様子で呟きます。因みに白い包帯は魔力を通すだけで新品のように綺麗になるため、問題はありません。


「そ、そう?」


 ノエルの様子を見て過剰に脅しすぎたとわかったのかノンは居心地が悪そうに頭をかきます。


(ちょっと前世で読んだ漫画を参考してみたけどやりすぎちゃったか)


「とりあえず、もう一回起こして色々と話を聞こう」

「うん」


 それからまた水をかけて男を起こしますが悲鳴を上げて暴れ始めたため、もう一度、包帯で拘束する羽目になりました。

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