第222話 魔道具
「なんでっ」
ノンはノエルを庇うように前に出ながら叫んでしまいます。それもそのはず。目の前の男たちから魔力を一切、感じないからです。
「やっぱり、魔力感知か。ガキの割に相当な手練れ。噂通りだな」
「噂……まさか」
そんな彼を前にしてリーダーの男は笑いながら呟きました。ノンの魔力感知や包帯を見てもさほど驚いていない。それは王都に来るまでに襲ってきた盗賊と同じような反応です。つまり、彼らもノンたちの情報を持っているということでした。
「ああ、盗賊にも情報網があってな。特に俺たちはそこの娘を攫う役割があったから面倒そうな冒険者の情報はすぐに入ってくんだよ」
『まぁ、まさかその噂のガキがお前だとは思わなかったけどな』と笑っていた男はその雰囲気をガラリと変え、ノンを睨みつけます。路地裏で会った時、すでに彼らはノンのことを知っていました。しかし、容姿は上手く伝わっていなかったため、不意打ちが上手くいったのです。
「……」
男たちはいつ襲ってきてもおかしくありません。ここは狭い通路かつノエルが後ろにいます。ここで戦うのは得策ではないでしょう。
「ノエちゃん、少し我慢してね」
「ぇ――」
ノンは後ろにいるノエルの腰に腕を回して一気に後ろに下がりました。もちろん、魔力循環によって強化された脚力によって二人の体は凄まじい勢いで後方へと飛んでいきます。
「ちっ、魔力循環かよ! どうりで走っても追いつけないはずだ。だがな!」
「ッ――」
すでに何度か奴の前で魔力循環を使っているところを見られたからか、リーダーの男は舌打ちをしながら右腕を上に掲げます。その瞬間、ゾクリとした背筋が凍りつくと同時に男たちの姿がフッと消えてしまいました。
(あの腕輪か!)
きっと、あの腕輪が様々なものを消している魔道具なのでしょう。そして、あの嫌な感覚。そう、王都に着いた時に感じた不気味な気配です。
「このっ」
男たちの姿は消え、魔力も感知できません。ノンは咄嗟に包帯を伸ばして巨大な白い塊を作りました。そのまま通路いっぱいまで大きくなったその塊を前へ射出し、奥の壁にぶつかって壁を粉砕します。
「……駄目か」
男たちが姿を消しているだけなら白い塊にぶつかって今頃、壁に叩きつけられているでしょう。ですが、特に手応えがなく、姿を消している状態では触れることすらできないのかもしれません。
「残念だったな!」
「ひゃっ」
それを証明するようにノンの真横でリーダーの男が勝ちを確信したように笑いながら姿を現しました。その手には鋭いナイフ。それを見たノエルが小さな悲鳴を上げました。
「―――」
しかし、ナイフがノンへ突き立てられる前に彼の体はふわりと上へと浮かび上がりました。服の下に隠している包帯を操作してノエルの体ごと上に持ち上げたのです。そのおかげでナイフは空を切り、回避されるとは思わなかった男は目を見開きました。
「逃がすかよ!」
ですが、今度は左から別の男が現れ、ノンたちへ手を伸ばします。そして、ノンの左足首を掴まれてしまいました。
「よし、これで――」
「――馬鹿、早く離せ!」
「え、なっ」
捕まえたことに笑みを浮かべた男でしたがリーダーの叫びを聞いて体を硬直させます。もちろん、その隙を逃すノンではなく、全力で左足を振り上げました。強化された足は大人の体を軽々と持ち上げ、その勢いに負けた男は手を離してしまい、そのまま天井に叩きつけられてしまいます。
「わーお」
パラパラと天井の破片が落ちるのを見て後ろでノンの背中にしがみついているノエルが声を漏らしました。
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