第221話 看破
椅子に座った二人は露店街で買った後、マジックバックへ放り込んであった料理を食べ、少しだけ休憩した後、また地下水道を歩き始めます。休憩しつつお腹を満たしたからかノエルの顔色も少しだけ良くなったようでその歩みも先ほどよりもスムーズでした。
(でも、状況は変わってない。急いで脱出しないと)
地下水道に落ちてから全力で魔力感知を使っていますが何も進展はありません。ただ時間だけが過ぎていきます。
「……あれ」
その時、水路しかなかった地下水道で初めて部屋らしき場所を見つけました。ノンはノエルに視線を向けると彼女もコクリと頷き、その部屋を覗いてみます。
「休憩室みたいだね」
地下水道で作業する際、休憩室として利用しているらしく、それなりに広いその部屋には簡易的なトイレやごみ箱が設置されていました。しかし、最近使用された形跡はなく、ここで待っても救助は期待できそうにありません。
「ここで休憩すればよかったね」
「水路を見ながら食べる果物も乙だった」
ノエルは表情を変えずに答え、地面に落ちていたごみをゴミ箱へ入れます。人攫いに狙われているのにあまり態度が変わらない彼女ですが、呑気なのか心が強いのか判断しにくく、ノンも苦笑を浮かべるしかありませんでした。
「そっか……あ、向こうにも入り口がある」
「あっちはまだ未探索」
「うん、今度は向こうを探してみよう」
ノンとノエルは休憩室を出て再び薄暗い地下水道を探索します。それから何度か休憩室に似た小部屋を見つけ、中を調べますが残念ながら特に出口のヒントとなるものはありませんでした。
「……あれ」
「ノンくん、どうしたの?」
時刻は十八時。探索を始めて二時間が経ち、ノンは立ち止まって水路を見つめ始めます。そんな彼にノエルは不思議そうに声をかけました。
「この水路、見たことがある」
「え? そう?」
「うん、あそこ。特徴的な傷があるなって思ってたんだ」
ノンが指さしたのは水路の端に付いた稲妻のようなギザギザの傷。探索を始めた頃に水路の様子を見ていた時に見つけたものでした。
「でも、ここは小部屋を何個か超えた場所。おかしい」
「そう、おかしいんだよ」
ここは最初に落ちたところから離れた場所です。あんな特徴的な傷が偶然にも同じような場所にできるとは思えませんでした。
「……ノエちゃん、ちょっと無茶するね」
「ノンくんの無茶はすごそう。気を付けて」
「うん、ありがとう」
ノエルの許可を得たノンは目を閉じて包帯を伸ばします。その包帯は一か所に集まっていき、巨大な槍のような形になりました。
「せーのっ!」
そして、その槍を適当な地下水道の壁にぶつけます。巨大な槍は地下水道の壁に突き刺さり、大きな傷を付けました。
「ッ……ノエちゃん、走るよ!」
「がってん」
槍を解いた後、ノエルに包帯を巻き付けたノンは急いで来た道を戻り始めました。その勢いはノエルの体が浮いてしまうほどであり、彼女は彼の腰にしがみついて必死に耐えます。
似たような通路を右へ左へ。小部屋を抜け、また通路。その足は最初に見た休憩室に辿り着いてもなお、止まりませんでした。
(ここだ!)
ノンたちは稲妻に似た傷を見つけた通路へと戻ってきます。そして、目の前の光景に言葉を失くしました。
「この傷、さっきノンくんが……」
「うん、そうだね」
地下水道の壁には大きな穴。そう、先ほどノンが巨大な包帯の槍で貫いた時にできた穴そのものです。
「僕たち、同じ場所をぐるぐる回ってたんだ」
「そうだ、やっと気づいたようだな」
地下水道の秘密に気づいたノンの耳に男の声が届きました。振り返るとそこにはニヤニヤと笑うあの人攫いの三人組がそこに立っていたのです。
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