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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第215話 西区

「やっぱり、ここは賑わってるね」


 西区に戻ってきた二人は串焼き屋を探して露店街を歩きます。その途中、ノエルがノンに手を引かれながら露店街の賑わいを見て感想を零しました。


「さっきここで買い物したけど色々なお店があったよ。だから、日用品を買いに来る住民とかお土産を吟味するために観光客もたくさん立ち寄るみたい」

「おー。あ、あの人は冒険者さん?」


 もちろん、冒険に必要な物資を集める冒険者の姿もあり、ノエルは鎧を着こんだ女性を指さしてノンへ問いかけます。女性が着ている鎧から魔力を感じるため、何かしらの強化が施された装備なのでしょう。


「うん、そうみたい。でも……」


 西区は大勢の人が行き交っています。そのため、自然と人の目が多く、人攫いたちは近づかない場所なはず。しかし、ノエルを攫ったあの三人は路地裏を通り、西区の露店街を目指していました。


「ノンくん、あそこに串焼き屋がある」


 僅かな違和感を覚えた時、くいくいと手を引かれて正気に戻りました。ノエルが串焼き屋を見つけたようです。


「そうだね。じゃあ、買いに行こうか」


 それから二人は連れ立って串焼き屋に行き、串を二本、購入して近くのベンチに腰掛けました。


「はい、ノエちゃん。熱いから気を付けてね」

「うん、ありがとう」

「……」

「……もしかして食べ方がわからない?」


 ノンから串焼きを受け取ったノエルですが、微動だにせず串焼きをジッと見つめ続けます。その隣でノンも串焼きを持ちましたが彼女の様子が気になり、思わず問いかけるとコクリと頷きました。


(やっぱり、お嬢様だからこういうの食べたことないんだろうなぁ)


「えっとね、こうやって口で噛みつくんだよ」


 そう言った後、ノンは口で串焼きに噛みつき、串から引き抜きます。それを見たノエルは動かない表情のままぎょっとしました。


「斬新な食べ方」

「でも、美味しいよ。やってみて」

「う、うん……」


 少しだけ緊張した面持ちで串焼きを数秒ほど見つめた後、小さな口で肉に噛みつくノエル。そのままゆっくりと串から肉を引き抜きました。


「っ……美味しい」

「ね、あの串焼き屋さん、いいお店だったみたい」

「うんうん」


 一回やってみたからでしょう。ノンに負けない勢いで串焼きを食べ進めていきます。ついでに串焼きの魅力に気づいたからか、もう一本追加で買いに行き、もぐもぐとあっという間に食べてしまいました。


「串焼き、舐めてた。今度、おうちでも出してもらう」

「おうちだと噛みつけないかもね」

「噛みついてこその串焼き。絶対に成し遂げてみせる」


 すっかり串焼きが好きになったノエルはフンと鼻を鳴らして家で串焼きを布教するつもりのようです。貴族はテーブルマナーに厳しいため、成功する確率は低そうですがノンは笑いながら応援することにしました。


「ノンくんもおうちに来た時、串焼きの魅力を教えてあげてほしい」

「えー、それで上手くいくかなぁ」

「ノンくんはとてもお話が上手。お父様もお母様も串焼きにメロメロになるはず」

「そんなことないと思うけどな」


 ノンは自然と相手の気持ちを汲み取り、興味がありそうな話や相槌のタイミング、質問したりと上手に会話を続けられます。しかし、それはあくまで無意識でやっていることなので彼自身、その才能に気づいていませんでした。


「それより串焼き以外にも美味しいものはあるよ。暗くなる前に色々と見て回らない?」

「うん、それは大切。ノンくんとのデートは一分一秒も無駄にできない」

「デートだなんて大げさだなぁ。そういうのは好きな人に言ってあげて」


 ちょっとおませな部分が出たノエルにノンは立ち上がった後、苦笑を浮かべながら彼女に手を差し伸べます。それを見たノエルもベンチから降りて彼の手を取りました。

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