第210話 制圧
路地裏の向こうから迫る複数の魔力反応。ノンはマジックバックに袋をさっと入れて何食わぬ顔でマジックバックの中を漁る真似をします。これで小さな子供が背負っていた鞄の中を整理しているように見えるでしょう。
そうしていると感じ取った魔力の持ち主たちが姿を現します。大人の男が三人。その人相はそこまでいいとは言えず、身に付けている装備も軽装ではありますがちゃんと武装していました。
また、そのうちの大柄な男は肩にズタ袋を担いでいます。そして、その人を守るように中肉中背の男と痩せぎすの男がが前を歩く。そんな立ち位置でした。
「あの」
荷物を漁るノンを気にする様子もなく、男たちが後ろを通り過ぎます。しかし、そのすぐ後にノンは立ち上がって三人を呼び止めました。
「あ?」
先頭を歩いていた中肉中背の男は振り返りながらギロリとノンを睨みます。普通の子供でしたらそこで怯んでいるでしょう。ですが、彼の師匠はあのマジカルヤンキー。視線で何度も人を失神させた彼女の眼光に比べたら男の目など普通にしか見えません。
「お兄さんたちどこに行くんですか?」
「どこ? 何だ、物乞いか? わりぃな、先を急いでんだ。こんな路地裏じゃなくて大通りで観光客にでも声をかけた方が賢明だぜ」
そう言って男はそのまま歩き出そうとします。しかし、すぐにその足は止まりました。
「なんだ、これ?」
三人の男の前には白い細い布。それが蜘蛛の巣のように幾重にも重なり、路地裏を塞いでいました。
「先を急いでる理由はそのズタ袋に入ってるものに関係してるんですか?」
そんな彼らの後ろからノンは変わらぬ態度で再度、問いかけます。路地裏の向こうから感じた魔力反応は四つ。しかし、実際に姿を現したのは三人。そして、男の一人が背負っているズタ袋はノンと同じくらいの子供が入るほどの大きさでした。
「ちっ! おめぇら、早くや――」
ノンの異質さに気づいた男は仲間に声をかけますがその前に体を硬直させました。少し目を離した隙にすでに仲間の二人は白い包帯によってぐるぐる巻きにされており、身動きが取れなくなっていたからです。ついでに包帯で首を絞めて気絶させていました。
「な、んだ……」
「勘違いならごめんなさい。でも、人攫いは駄目ですよ」
「ガッ」
男がなにかアクションを起こす前に一気に距離を詰めたノンはドン、と拳を男の鳩尾に撃ち込みます。そして、そのままその男は気を失いました。
「……ふぅ」
まさかこんなところで人攫いに出くわすとは思わず、少しだけ緊張した彼でしたが無事に制圧できたため、小さく息を吐きます。それからマジックバックからロープを取り出して三人の男を手早く縛りました。
「ちょっと揺れるよ」
男たちを気絶させた時、落ちないように包帯でしっかりと保護したズタ袋を慎重に降ろしてその中身を確かめます。
「……」
最初に見えたのはピンクが混じった淡い金髪。そして、ノンと同じくらいの小さな体。身に纏っている衣服はどこか高級そうであり、少なくとも庶民ではないことは明らか。そう、ノンの予想通り、ズタ袋の中には幼い女の子が入れられていたのです。
「すぅ……すぅ……」
その女の子は眠らされているのか、小さな寝息を立てています。とりあえず、酷いことはされていないようだったのでノンはホッと安堵のため息を吐きました。
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