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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第199話 正体

「では、こちらでお待ちください」


 案内している間に冷静になったのでしょうか、受付嬢は落ち着いた様子でノンたちを奥の部屋――応接室まで案内した後、いそいそと部屋を後にします。


「まさかこんなことになるなんて思いませんでしたね」

「うん、どんな話なんだろ?」


 受付嬢の様子がおかしくなったのはアレッサの名前を聞いた時からでした。おそらく彼女が関係しているとは思いますがその内容まではわかりません。


「失礼します」

「あ、はい。どうぞ」


 あーでもないこーでもないとノンとマーシャが話していると三度のノックと共に若い女性の声が扉越しに聞こえました。ノンが返事をすると扉が音もなく開き、その向こうからうら若き少女が姿を現します。


「わぁ、綺麗な人……」


 その少女はマーシャが思わず声を漏らしてしまうほど容姿が優れていました。透き通るプラチナブランドの長髪。身長はアレッサよりも低いですがそう感じられないほど背筋は凛と伸び、歩く姿も一切のブレがありません。なにより、その顔はまさに絶世の美女と言われてもおかしくないほどであり、ノンも目を見開いて驚いてしまいました。


「ふふ、ありがとう」


 マーシャの呟きが聞こえたのでしょうか。その少女は立ち止まり、彼女へと視線を向けて笑います。同じ美少女なのにアレッサの笑い方はどこか豪快であり、見た方も楽しくなるような印象を受けますが彼女の場合、静謐な雰囲気を纏っているため、委縮してしまいそうでした。


「あ、いえ……すみません」

「いいのよ、謝らなくて」


 マーシャもその雰囲気にやられてしまったのか、ぺこぺこと謝りますが少女は首を振ってそれを許し、ノンたちの対面へと腰を掛けます。


「改めまして、私はアリス。王都ブレゾニア西区冒険者ギルドのギルドマスターを勤めています」

「ぎ、ギルドマスター、ですか?」


 少女――アリスの正体を知ったノンは目を見開き、思わず聞き返してしまいました。彼女が纏う魔力の雰囲気も人間のそれ。耳も尖っておらず、獣耳も生えていないため、彼女はれっきとした人間だと思われます。


「ええ、まだ歳は二十二だけどこれでも立派なギルドマスターなの。よろしくね、ノン」

「あ、こちらこそよろし――ッ!?」


 ノンの反応には慣れているのでしょう。アリスはどこか慣れたように笑いながらノンへ手を差し伸べました。そのまま、彼女の手を取ろうとしたノンでしたがその手に込められた魔力に嫌な予感がしてその途中でピタリと動きを止めます。


「――うん、いいね。合格」


 そんな彼にアリスは一瞬だけ目を鋭くした後、今度こそ嬉しそうに笑みを浮かべました。その姿は先ほどまで纏っていた静謐な雰囲気はなく、少しだけ親しみを覚えます。


「……」

「えっと、ノン君? どうしたの?」

「今、この人、手に魔法を待機させてました。多分、あのまま手を握ってたら何かしらの魔法が発動してたと思います」

「え!?」


 まさかそんな罠を仕掛けられていたとは考えもしなかったマーシャはアリスの手に視線を向けます。白くて小さな手を凝視しますが残念ながらすでに魔力は霧散しているのでそこには何もありません。


「魔法といってもちょっとお水が出るだけよ。爆発とかしないわ」

「その分、感じ取れる魔力は少ないから気付かれづらい。そうですよね?」

「ふふ、そこまでバレてるなんて……さすがアレッサのお弟子さんね」


 くすくすと笑うアリスですが、ノンはアレッサとの関係もバレていることに知り、彼女に対する警戒心をより強めます。

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