第196話 気配
「えっと、師匠は大丈夫なんでしょうか?」
「どう、なんだろうね」
王都へと入ることができた二人でしたが、その顔はどこか暗く、無許可で王都へ侵入したアレッサの安否を心配していました。
「でも、まさかマジカルヤンキーの名前がここまで残ってるとは思いませんでした」
「その、マジカルヤンキーってなに?」
「えっと……師匠の尊厳のために内緒でお願いします」
「あ、うん……聞くのやめておくね」
きっと、アレッサなら何とかするだろう。ひとまず、やることをやってから今後のことを決めることにした二人は頷き合い、冒険者ギルドに向かって馬車を進めることにします。
今回、マーシャは護衛依頼を冒険者ギルドに出し、それをノンたちが受けました。そのため、無事に王都に着いたことをギルドに報告する必要があるのです。
また、それ以外にもノンの貼り紙を貼ったり、盗賊の動きがおかしかったことを報告しなければなりません。問題はアレッサがいないこと。ニックのようにノンを見た目で判断しない職員であることを祈るばかりです。
「それにしてもやっぱり人が多いですね」
マーシャがゆっくりと馬車を進める中、ノンはキョロキョロと周囲を見渡しながら感想を漏らします。王都は人口五百万人を超える大都市。特に門の近くは王都に来た人や出ていく人。そんな彼らをターゲットにした商店が並び、賑わっていました。
人間は当たり前としてたまにルーのように獣の耳が生えた獣人。耳が尖った美人のエルフ。髭面の小さな体が特徴的なドワーフなど。オウサマから聞いていましたがファンタジー世界にふさわしい様々な種族が道を行き交っており、ノンのテンションも少しずつ上がっていきます。
「うん、今からここで商売をすると考えるとわくわくする」
そんな彼に気づくことなく、御者台に座っていたマーシャはそう言いながら嬉しそうに笑います。あの村で商売を成功させたことが自信に繋がったようでその顔には曇りはありません。少し心配してノンも彼女の姿を見てホッとしたように頬を緩めました。
「あ、マーシャさん。あそこに地図がありますよ」
その時、ノンは道の端に王都の簡易的な地図が貼られたボードを発見します。ノンとマーシャは王都に来るのが初めてなので地理を知りません。そのため、とりあえず馬車を道の端に停めて冒険者ギルドの場所を探します。
「えっと、冒険者ギルドは――ッ!?」
地図を二人で眺めていた時でした。ゾクリ、とノンの背筋に凄まじい悪寒が走ったのです。思わず、その場で振り返って周囲の様子を確かめました。しかし、そこには道を行き交う人たちだけで怪しい人物はいません。魔力感知もこれだけ人がいると魔力が混じり合い、すでに覚えたアレッサやマーシャの魔力でさえも見分けがつかなくなりそうです。
「ノン君? どうしたの?」
「いえ……何でもありません」
慌てたように周囲を警戒しているノンにマーシャは首を傾げました。彼自身、ただ嫌な気配を感じ取っただけであり、確信がなかったため、何も言わずに地図へと視線を戻します。
(でも、あれは……)
確信はない。でも、確実に何かを感じ取った。それだけは間違いありません。しかし、具体的に何を感じ取ったのか言語化できず、ノンは少しだけやきもきしてしまいました。
「あ、ノン君。冒険者ギルド見つけたよ。この道をまっすぐだって」
「……わかりました。急ぎましょう」
「? うん、わかった。アレッサさんも探さないといけないもんね」
王都周辺の盗賊の動きや今の嫌な気配。何となく厄介ごとが起こりそうな気がした彼は荷台へと跳び乗り、冒険者ギルドへと向かいます。
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