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第17話 道具

 少し睡眠時間が長いだけでやっと普通の生活を送れるようになったノンですが、慣れないことが多々あります。その一つが魔道具の存在です。ジェードが部屋の明かりを点ける際に触った装置も魔道具でした。


 実はノンが住んでいる家は彼の想像以上に裕福だったらしく、衣服や食事などの生活水準は日本に劣るものの魔道具に関して言えば同等――いえ、それ以上に便利なものもあります。


 例えば、洗面所。トイレ、お風呂、洗面台が一緒になっているタイプですが、日本と同じように蛇口が付いていました。排水溝も完備され、水回りは日本とほとんど差異はないように思えます。更に冷水はもちろん、温水も出すことができるため、湯船にお湯をためる時や寒い日でも安心。


 トイレも水洗であり、匂いは気になりません。しかし、興味があるのはその仕組み。日本は水の豊かな国でしたので問題はありませんでしたが、この世界も同じなのでしょうか?


「これはね? 精霊石っていう石がお水を出してくれてるの」


 それを母親に質問してみたところ、そのような回答が返ってきました。どうやら、この世界では魔力を消費して効果を発揮する精霊石と呼ばれるものを使った道具があり、それらを魔道具と呼んでいるそうです。


「でも、これには絶対に触っちゃ駄目よ。お水が出なくなったら私とかルーに教えてね」


 そう言って指を指したのはトイレの裏に隠されたように設置された箱。その中を見せてもらうと大人の手に乗るぐらいの綺麗な青い石がはめこまれていました。この綺麗な青い石こそ精霊石。この石に触れながら魔力を流すと水が流れ、一定量を貯められるようです。地球でいうバッテリーのような役割も担っているのでしょう。


 ほかにもキッチンにはコンロや冷蔵庫、食器洗浄機。廊下は照明によって照らされ、ノンがまだ入ったことのない部屋には洗濯機があるとエフィが教えてくれました。


(電気を使わず、魔力だけで動くことも考慮すればこの点は地球よりも進んでるなぁ)


 キッチンでお昼ご飯を作っているルーの背中を見ながらノンは感心します。なお、料理をしているルーですがフライパンで野菜を炒めながら時々、コンロの側面にある小さな赤い精霊石に触れて魔力を流していました。どうやら、コンロには火事防止のためかバッテリーの役割はないようで火が消えないように度々、魔力を流す必要があるようです。


(あれ、でもなんで魔力を流してるってわかったんだ?)


 その姿を眺めているとふと精霊石に魔力をどれくらい流したかなんとなくわかったことに気づきました。毎晩、魔力を操作する練習をしている成果でしょうか?


「ノン様、そろそろお昼の……どうかなさいましたか?」


「ううん、なんでもなーい」


 火を止めて振り返ったルーでしたが、ニコニコと笑っているノンに気づき首を傾げます。まさか練習の成果がわかって嬉しかったとは言えず、彼は笑いながら首を振って誤魔化しました。

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