第194話 到着
ブレゾニア王国の王都――ブレゾニア。王国名と同じ名前を付けられたその街は人間の国の中でも最大級であり、その人口は約五百万。魔法が進歩しているものの、文明自体は中世に近いこの世界でその規模の街は世界中でも片手で数えるほどしかありません。
またブレゾニアは巨大な湖の中心にあり、対岸とは大きな橋によって繋がっています。更に街へ入るための門は東西南北に一つずつ用意されていました。
「つまり、東西南北にある橋を渡り、門からしか王都へは入れないわ」
「ずいぶん厳重なんですね」
「まぁ、ブレゾニアの王家が住んでる街だもの。もしものことがあったら人間の国は大混乱。そのために可能な限りの警備は必要ってこと」
街へ入る手続きをするため、列に並んでいる間にアレッサから王都の警備に聞いたノンは感心しながら目の前にそびえ立つ外壁と門を見上げます。ブレゾニアは大きな湖の中心にあり、その街の周辺を高い壁で囲んでいました。
「でも、空からなら侵入できますよね?」
「当たり前のように上空からの襲撃を口にしないで……目には見えないけど上空は結界で守ってるわ。ドラゴンのブレスでもびくともしないんですって」
「へぇ、あれを防げるのはすごいですね」
「あの、ノン君? ドラゴンのブレスを実際に見たことがあるみたいな反応は?」
「気にしたら駄目よ。胃に穴が開くわ」
実際に見たことがあるので実際に見たような反応をしたノンにマーシャが冷や汗を流しますがアレッサが考えることを止めさせました。知らない方が幸せなことがあると彼女は身を持って知っているからです。
「さぁ、そろそろ私たちの番よ。ノン、冒険者カードを用意して」
「はーい」
「マーシャは商人カードよね?」
「はい、しっかり用意してきました」
王都に入る際、どの門でも必ず身分証明書の提示を要求されます。そして、犯罪歴などがないか調べられ、異常がなければ門を通ることができます。しかし、今回の場合、商人のマーシャがいるため、馬車の荷台の中も調べられるでしょう。そして、ギルドに報告した商品と差異がないか確認します。そのせいで街に入るための手続きが長引き、常に門は長蛇の列となるようでした。
「あれ、でも、村で銅板とお酢を売ってしまいましたが大丈夫なんですか?」
「そのための商人カードよ。あの時は客の相手をしてて見れなかったでしょうけど、実は商人カードには商品のやり取りをした経歴を残す機能があるの。だから、商人カードを提示すれば商品の差異があっても大丈夫ってわけ」
「へぇ……冒険者カードもそうですけど便利ですね」
「そうそう。だから、失くした時が大変なの。大事に持ってなさいよ」
「よーし、次!」
そんな話をしている間にノンたちの番が来ました。ノンとアレッサは荷台から降り、門番へと近づきます。その男は髭が生えており、老けて見えますがよく観察するとアレッサと同じ歳くらいの青年でした。
「商人の彼女と護衛二人よ」
「はぁ? 護衛? お前らが?」
荷台から降りてきたのが女子供だとわかった時点で門番の男は訝しげな表情を浮かべていましたがその二人が冒険者だと知ると声を荒げました。その目は完全にノンたちを見下しています。
「全く、ごっこ遊びに付き合ってる暇はねぇんだ。そっちの商人の女も若いし……ふざけるならこっちだって黙ってないぞ」
「ふざけてるわけじゃないわ。ほら、冒険者カードよ」
「僕のもどうぞ」
「おいおいおい! お前はともかくそのガキは小さすぎるだろ! 冒険者になれるわけがねえ!」
ノンの冒険者カードを受け取ろうともせず、男はギロリとノンを睨みつけます。これまで彼が出会った人たちは多少なりともノンの実力を疑いますが冒険者カードや実際に戦う姿を見るとその評価を改めてくれました。ですが、この男は確かめようともせず、見た目だけで判断するタイプのようです。
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