第187話 販売
村に到着してから三日経ちました。今日の午後にこの村を出発します予定のノンとマーシャは再び同じ場所にテーブルを置き、銅板を設置していきます。
「こんなに仕入れていたんですね」
「うん、馬車の匂いが消えてくのがわかってから急いでね。さて、結果はどうかな」
そう言いながら商売の準備をしていく彼女でしたがその顔に不安はなさそうでした。そして、ドタドタと誰かが走り寄ってくる音がします。
「おーい、商人の姉ちゃんとスゴ技のおちびさん!」
その声に振り返ると三日前、最初に銅板を渡した冒険者の男性が手を振っていました。その姿は普段着であり、あの鎧を着ていません。
「探したぜ! 今日でこの村を出発するんだろ?」
「そうですね。その前にここで銅板を売ろうかと」
「そうそう! その銅板! 売ってくれないか!」
「え!?」
「はい、まいど!」
男性の言葉にノンは目を見開き、マーシャは嬉しそうに笑いました。どうやら、試供品の効果があったらしく、マーシャの思惑通り、銅板が売れたのです。
「どれくらいの大きさにしますか?」
「そうだな……これぐらいか。あとはもう少し小さく切ったものを三枚」
「じゃあ、料金は――」
ノンが驚愕して硬直している間にも話が進んでいきました。マーシャは計算しながら鋭い針で銅板の表面を削り、印をつけていきます。
「ノン君、カットお願いできる?」
「あ、はい!」
「いやぁ、これすげぇな! あんなに臭かったブーツがその辺に置いておいてもそんな気にならないぐらいになっちまって!」
「それはよかったです!」
「ただなぁ……」
ノンが包帯を使って器用に銅板をカットしていると男性はどこか困ったように頭をかきました。もちろん、男性と話していたマーシャもそれに気づき、どこか不安そうな表情を浮かべます。
「何かありました?」
「いや、俺のブーツが汚れすぎてたから悪いんだが……貰った銅板が汚れちゃってな。せっかく使いやすいようにカットしてもらってるけどすぐに駄目にしそうで」
「そっか……そこまで考えてなかったなぁ」
「あ、それならお酢で綺麗になりますよ」
男性の話を聞いてマーシャはどこか悔しそうな顔をしました。しかし、すかさずノンが割り込みます。靴の匂いを十円玉で取れるのと同じように汚れた十円玉にお酢をかけると綺麗になるとテレビで見たことがありました。
「……ノン君」
「はい? あ、銅板のカット終わりましたよ」
「うん、ありがとう。ねぇ、その話、ホント?」
「え、聞いた話ですが……綺麗にした後、銅板にお酢の匂いが付いちゃいますけどしばらく放置しておけば匂いは消えるはずなので使いまわせると思いますよ」
ノンの言葉にマーシャと冒険者の男性は顔を見合わせます。そして、無言のまま、マーシャはコクリと頷きました。
「よっしゃ! 姉ちゃん、同じサイズの銅板を追加で買うぞ! 頷いたってことはお酢もあんだよな!?」
「もちろん! ノン君、アレッサさんと一緒に馬車からお酢をありったけ持って来て!」
「へ?」
「調味料もいくつか仕入れてたの! お願い、急いで!」
「は、はい!!」
マーシャの叫び声にノンは血相を変えて宿へと向かいます。今の彼女はアレッサと似た何かを感じ、従うほかありませんでした。
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