第16話 日課3
魔力。まだ確信を得たわけではありませんが母親との会話でほぼ確定した不思議な力。科学が進歩した世界――地球で育った彼には馴染みのない力ですが、だからこそ魔力が発せられると違和感を覚えます。今日の昼間もエフィが魔法を使う度、言葉にできない何かを感じ取っていました。それは前世でいえばブラウン管テレビの電源が付いている時、耳がざわざわする感覚と何となく似ています。
しかし、魔力の波動を感じ取る、という行為は今後、生きていく中で使えるのではないかとノンは考えました。
例えば、ブラウン管テレビの画面が真っ暗な状態でも電源が付いているとわかると電源を消して電気代の無駄遣いを防ぐことができます。このように一見、何に使うかわからないものでも意図しないものに役立てられるかもしれません。
もちろん、ノンも簡単に感じ取れるとは考えていませんでした。そこで思いついたのが魔力に触れる、という行為。以前、体の中に流れる魔力の動きを変えましたがそれを極めることでもっと魔力のことを知ることができるのではないかと考えたのです。
そして、試行錯誤の末、体の奥底へ沈むと魔力をよりはっきり感じ取れることに気づきました。
「……」
体の奥底へ沈んでいる間、意識が浮上しないように一言も話しません。いえ、集中力を切らさないように呼吸一つにも気を配ります。そうしてやっと彼は魔力という存在に触れることができました。
彼の中にある魔力は相変わらず指輪に向かって流れています。それは山の頂から海へ流れる川のようでした。今ならはっきりとわかりますが前に魔力を動かした時、ノンはこの流れを感覚だけで動かしていたのでしょう。
(今日はどんな風に動かそうかなー)
意識を集中させているノンですがこの状態にも慣れてきたため、思考できるようになりました。これまでは魔力のところへ沈んだ後、その状態を保つだけでせいいっぱいだったのでこれだけでも成長を感じます。
もちろん、魔力を動かすだけなら以前と同じように意識を沈めなくても可能です。ですが、それでは意味はありません。あくまであれは川に手を突っ込んで流れを変えているだけです。その延長で体の中をぐるぐると循環させることはできましたが逆に言えばそれが限界だったのです。
しかし、この状態になった場合、話は変わります。体の中を循環させるのはもちろん、魔力の出力を増やしたり、右手だけに集中させたり、と応用が利くようになりました。
ですが、デメリットもあります。動かすだけでも魔力の残量が減ってしまうこと。そして、魔力が一定のところまで減ると彼の意識は体の奥底から浮上し、そのまま眠ってしまいます。
魔力を動かすことに意味はあるのか。それは彼にもわかりません。それでもノンはいつもと同じように魔力を操作し始めました。
今は意識を集中しなければ魔力を自由に動かせませんがいずれ意識せずとも今と同じようなことができるようになれば何かに役立てられるかもしれない。そう、期待して。
ノンはそんな思いを胸に今日も魔力を思うままに動かします。
――スキル『■■』の効果が発動しました。
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