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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第177話 料理

「じゃあ、野営の準備をするわよー」

「はーい」

「わ、わかりました!」


 時刻がそろそろ夕方になる頃、アレッサの合図で野営する場所を探すことにします。街からまだ近いこともあり、すぐに野営に適した場所を見つけることができました。マーシャは初めての野営ということもあり、少し緊張しているようです。


「じゃあ、ノン。晩ご飯の用意よろしく」

「了解でーす」


 マジックバックのことがばれた罰としてノンは今日の晩御飯担当。早速、マジックバックから調理道具を取り出し、晩ご飯の準備を始めました。


「えっと、私も手伝う?」

「あ、いえ、大丈夫ですよ。マーシャさんはカーブのお世話しててください」


 声をかけたマーシャにノンは笑いながら断ります。今日一日、馬車を引いてくれたカーブのお世話は彼女にしかできません。


「そう? 何かあったら言ってね」

「わかりました、ありがとうございます」


 お礼を言った後、調理を始めるノン。しかし、やはり心配なのでしょう。カーブのお世話をしながらちらちらとノンへ視線を向けていました。


「……マーシャ」

「はい?」


 そんな彼女にテントを張り終えたアレッサが話しかけます。彼女はどこか遠い目をしており、マーシャは思わず首を傾げてしまいました。


「ノン、めっちゃ料理上手いから……覚悟した方がいいわよ」

「へ?」






「え、なにこれ……美味しい……」

「そうですか? ありがとうございます」


 日もすっかり暮れ、焚火の光だけが頼りとなった野営地にマーシャの驚いた声が響きます。彼女の手には料理が乗ったお皿があり、目を見開いていました。その料理を作ったノンは照れ臭そうにお礼を言います。


 ノンは精霊の国にいた頃、オウサマから料理の手ほどきを受けていました。更に前世で食べたことのある料理を再現しようと色々と試行錯誤している間に料理の腕がめきめきと伸びたのです。


「ね、言ったでしょ。正直、その辺のお店より美味しい料理が出てくるのよ。しかも、野営で」


 野営地では限られた調理器具しか使えず、簡単な料理しかできません。しかし、ノンの料理はそれでも美味しく、マーシャは驚くしかありませんでした。


「今日は旅に出た初日なのでちょっと豪華にしてみました」


 ノンはそう言って自分が作った料理に視線を向けます。大きな鍋にはビーフシチュー。更に付け合わせとしてこんがり焼けたパンとスクランブルエッグ。最後に小さなハンバーグというラインナップです。基本的にパンとハンバーグをビーフシチューにつけて食べ、お口直しにスクランブルエッグを用意しました。


「これだけの料理を作るの大変だったんじゃない?」

「いえ、実はビーフシチューは宿の台所を借りて作っておいたんです。マジックバックってどれだけ左右に振っても中身に影響がないので鍋ごと入れてきました」

「え、便利……」

「……待って。ノン、もしかして最初から今日の晩御飯、作るつもりだった?」

「まぁ、そうですね」


 マジックバックの隠された性能にマーシャが目を見開く中、アレッサは今の話を聞いて唖然としてしまいます。それに対し、あっけらかんと答えるノン。


「もー、これじゃ罰にならないじゃない」

「本当はビーフシチューとパンだけだったんですよ。追加でスクランブルエッグと後日のために用意してたハンバーグを出したんですから許してください」


 マジックバックは中に入れた物の時間が止まるため、ノンは調理済みの料理をいくつか用意して収納しています。ハンバーグも種を用意しており、それを整形して焼いただけでした。


「マジックバック一つでできることが色々増えるんだ……やっぱり、欲しい。もしくはノン君とずっと旅してたい」

「止めておきなさい。私みたいにノンなしで旅ができなくなるわ」


 マーシャの呟きにアレッサはどこか諦めたような顔をしながらハンバーグにかぶりつきます。もう彼女は手遅れでした。

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