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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第三章 英雄くんは王都へ行きたい
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第174話 仕組み

朝の五時まで残業して午後一時に出社予定です。

ストックを溜める時間がない……助けて……

「んー……おはよー」


 あれからマーシャと話をしながら外の景色を眺めていたノンですが、荷台からアレッサの寝ぼけた声が聞こえて振り返ります。トレードマークのとんがり帽子を外している彼女は綺麗な銀髪をピョンと跳ねらせていました。


「やっぱ、クッションを買い込んでおいてよかったわ。きっと、なかったら体中痛かったもの」

「そうですね。私も初めて馬車に乗った時、クッションとか用意してなくてお尻が痛くなっちゃいました」


 くすくすと笑うマーシャですが、彼女のお尻にはふかふかのクッションが置かれています。少しくたびれているように見えるのはずっと使い続けている証拠でしょう。


「初めて乗ったのはいつなんですか?」

「んー、子供の頃だったけど……ちょうど、ノン君と同じくらいの時だったかな? おじいちゃんが乗ってるところを見て私もって駄々こねたら乗せてくれたの」


 その時のことを思い出しているのか、彼女はどこか優しい笑みを浮かべます。そんな彼女を見てノンはエフィに魔法球を見せて欲しいと我儘を言った時のことを思い出しました。きっと、マーシャの祖父もあの時のエフィと似たような顔をしていたでしょう。


「あら、随分仲良くなったじゃない?」

「はい、色々お話ししました。あ、そうだ。実はマーシャさんから提案されたことがありまして」


 それからノンはマーシャがおうちを探す手伝いをしてくれること。主に冒険者ギルドの掲示板に貼り紙を貼ってもらえるように頼むつもりだと伝えました。


「なるほど……私たちが用意した貼り紙にはレニックスの冒険者ギルドに情報を送るようにお願いしてるわ」


 まず、ノンの貼り紙を見た人がノンの家族に関する情報を持っていた場合、最寄りの冒険者ギルドへ行き、レニックスの冒険者ギルドへ情報を提供します。その後、レニックスのギルドマスターがその情報の信憑性を調査。そして、その調査の結果をノンとアレッサが最後に立ち寄った冒険者ギルドへ伝え、初めてノンたちが情報を得られる、という仕組みです。


 冒険者ギルドは緊急の依頼があった時のため、遠隔で通話できる魔道具が常備されています。また、冒険者カードにはどの冒険者ギルドを利用したか履歴が残り、それを他の冒険者ギルドでも閲覧することができるため、彼らの足取りを追うことができるのです。アレッサがノンに街に着いたら最初に冒険者ギルドに立ち寄ると言ったのはこの履歴を残すためでもありました。


「すでに貼り紙は何枚か用意してるから立ち寄った冒険者ギルドの掲示板に貼ってくれる? それだけでも十分なほど助かるわ」

「はい、お任せください!」

「まぁ、そのためにまずは無事に王都に着くことが優先ね。よいしょっと」

「そうですね。後ろはお願いします」

「はーい……でも、今回、出番あるかしら?」


 そこでアレッサはとんがり帽子を頭に乗せ、荷台の後ろへと向かって行きます。更にノンも御者台で立ち上がり、荷台の屋根へと跳び乗りました。


「え? ええ?」


 いきなり動き始めた二人にマーシャは目を白黒させてしまいます。そして、すぐに顔を青ざめさせました。


「ま、まさか!? 敵ですか?」

「はい、マーシャさんはそのままカーブの手綱を握っててください。僕たちがどうにかするので」


 屋根の上に立っているノンはマーシャに笑ってみせるとすぐに顔を上げて遠くの森に視線を向けました。そして、その森の中からワニに似た大きな魔物が顔を覗かせます。


「ノン、馬車に近づかせないで。あいつ、土魔法で岩を飛ばしてくるわ」

「はーい、了解です!」


 荷台の後ろから顔だけを覗かせてアドバイスをするアレッサと特に緊張した様子のないノン。街を出て数時間、旅は始まったばかりだというのに突然、魔物との戦いが始まってしまいました。

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