第173話 協力
お昼ご飯を食べ終えた後、ノンは御者台へと移動してマーシャにマジックバックを見せることにしました。アレッサがマーシャにならいいだろうと許可を出したからです。誠実さを大切にする彼女だからこそ、許したのでしょう。なお、許可を出した当の本人は大量のクッションに囲まれながら気持ちよさそうに仮眠を取っていました。
「へぇ! これがマジックバック……本物を見たのは初めて」
そんなマジックバックを見ながらマーシャは目を輝かせます。マジックバックは高位のダンジョンでしか手に入らない貴重品。それもノンの持つそれは容量が大きい一級品です。商人である彼女なら喉から手が出るほど欲しいものでしょう。これ一つで一度に運べる量が劇的に変わるからです。
「はい、僕が旅に出る時に知り合いがくれたんです」
そう言いながらノンは妖精王であるテレーゼの顔を思い浮かべました。今頃、彼女はお花に囲まれた妖精の国でのんびりとお花を食べているのでしょうか。その光景を思い浮かべ、小さく笑いました。
「知り合いが……ノン君はどうしてアレッサさんと旅をしてるの?」
「家に帰るためです」
「家に?」
「はい、色々あって家族と離れ離れになっちゃって……師匠に協力してもらいながら家を探してるんです」
ノンの答えを聞いたマーシャは息を呑んで言葉を失いました。こんな幼い子供が保護者同伴とはいえ、家族に会うために途方もない旅をしているとは思わなかったのでしょう。
「もしかして王都に行くのも?」
「はい、人間の国に住んでたことはわかってるので情報を集めるために行きます」
「そっか……大変だと思うけど頑張ってね。私も応援……あ、そうだ!」
その時、マーシャは何かを閃いたようでノンへと笑顔を向けました。
「私、王都以外にも色々な場所に行くつもりなの! その時、ノン君の家族も探す!」
「え、それってどういう……」
「商人って情報が入ってくる職業だからノン君の家族を探すお手伝いもできると思うの。どうかな?」
「なるほど……」
マーシャの提案にノンは思考を巡らせます。現在の方針は寄った街で高い塀に囲まれた家を探しつつ、情報を集めるために冒険者ギルドの掲示板に貼り紙を貼っていました。マーシャとは一緒に旅をするわけにはいきませんが掲示板に貼り紙を貼るだけでも助かるのは間違いありません。
「あとで師匠にも話をして効率のいい方法がないか考えてみたいです」
「うん、私も頑張るね」
アレッサのような仲間ではありませんが心強い協力者を得られました。ノンの旅は順調そのもの。しかし、今は王都に辿り着くことに集中しなければなりません。マーシャの護衛をしているのだと改めて気合を入れました。
「あ、そういえば……ノン君は魔法の練習しなくていいの?」
「え? 魔法ですか?」
「だって、アレッサさんの弟子なんだよね? 魔法の修行とかしてるんじゃないの?」
マーシャにはノンとアレッサの関係が旅の仲間であり、師弟関係だと伝えてあります。だからこそ、魔法使いのアレッサの弟子という先入観のせいでノンは魔法の修行をしていると思っているようでした。
「あー、すみません。僕、魔法使えないんです」
「……ん? じゃあ、なんでアレッサさんの弟子に?」
「えっと……人生の師匠、みたいな?」
戦い方や旅の注意事項などこれまでに彼女から教えてもらったことは多い。確かに人生の師匠といっても過言ではないでしょう。
「そ、そうなんだ?」
もちろん、それを知らないマーシャからしてみれば困惑するしかなく、ノンとアレッサの関係を不思議に思うのでした。
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