第115話 特異性
「おらぁ!」
そんな物騒な掛け声と共にまたオークの背中から炎の柱が飛び出します。そして、倒れる前に塵となり、彼女は次の獲物へと接敵して頭を叩き潰しました。
あれからどれほどのオークを倒したでしょうか。オークの軍団と評したこともあり、倒してもなかなか数が減りません。ノンも隙を見て包帯の剣で斬り裂いていますが彼女に比べたら手際がいいとは言えず、少しだけ申し訳なくなります。
(それにしても……)
炎を纏う拳で顎をアッパーカットし、オークの頭部が炎に包まれるところを見て魔法使いさんの魔法がオウサマに教えてもらった常識と少し違うことに気づきました。
魔法の基本は魔力を放出し、術式を組み上げ、形を作って射出する。そう、例外はありますが魔法は本来、遠距離攻撃として使用されることが多いです。その理由は『魔力を放出する』というプロセスにありました。単純に魔力を体外へ放出するため、そのまま形を作った後に撃ち出した方が早いからです。
つまり、魔法を撃ち出す以外の方法で運用しようとするとプロセスがもう一つ増えてしまい、手間がかかってしまうのです。そして、プロセスが一つ増えるだけで魔法の難易度は跳ね上がるとオウサマは言っていました。目に見えない魔力を放出した後、それを操作するのは空気中に存在している酸素を一か所に集める、と同じくらい難しいと言えば伝わるでしょうか。少なくともノンにはできません。
しかし、あの魔法使いさんは魔法を射出せずに拳に保持しています。おそらく、魔力を放出する際に放出する範囲を拳の周囲に限定し、炎が消えない程度の魔力を放出し続けることであの状態を保っているのでしょう。
更に恐ろしいのが炎を纏った状態で殴った後、体の内部へ炎を直接撃ち込んでいること。一瞬だけ見えましたが魔法使いさんがオークに腹部を殴った後、背中から炎の柱が飛び出します。ですが、オークの体には穴は開いていませんでした。おそらく、彼女の魔力がオークの体へ撃ち込まれ、内臓を焼き尽くしながら背中から飛び出しているのでしょう。
体さばきもそうですが、魔法の特異性も含めてノンは魔法使いさんに対する評価を更に上げます。きっと、並大抵の魔物では彼女に傷を付けることすらできないでしょう。
「おい、ガキ! 少し足止めしろ!」
オークとの身長差を活かし、隠れるように移動しながらオークを倒していると魔法使いさんからそんな指示が飛んできました。チラリと彼女を見れば何度もバックステップをしてオークたちから距離を取っています。最初、ノンがヘイトを取ったおかげで好きなように動けていましたがオークを殴り殺しすぎて注目を集めすぎてしまったのでしょう。このままでは囲まれてしまうと判断して離脱したようです。
「わかりました!」
「ッ!?」
あえて大きな声で返事をしてノンは近くにいたオークの肩へと飛び乗ります。いきなり足元から現れた彼にオークは驚いたような声を漏らしました。
(せっかく頼ってくれたから頑張るぞ!)
魔法使いさんの強さに中てられたのでしょうか。彼はいつも以上に気合を入れて包帯に魔力を通します。『よっしゃ、任せとけ!』と返事をするように包帯の輝きが増しました。
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