第114話 共闘
「【爆裂】!」
隣に立つ魔法使いさんは詠唱と共に両手に凄まじい熱気を放つ炎を点しました。そして、その場で軽くジャンプしながら相手の出方を見ています。その姿はまさにボクサー。真っ赤に燃える炎が赤いパンチンググローブのようでした。
「先に行きます!」
今の彼女は接近して戦うタイプでしょう。あれほどの数に無策で突っ込むのは危険です。ならば、とノンは魔力循環で肉体を強化して一瞬でオークたちへと接近しました。その脚力にノンが蹴った地面が炸裂し、後方へ土や小石が吹き飛んでいきます。
「―――!?」
いきなり目の前まで移動してきたノンにオークたちは動揺し、動きを止めました。その隙に彼は包帯で戦闘を走っていた弓矢ゴブリンをぐるぐる巻きにして真上に持ち上げ、オークの一体に叩きつけます。たったそれだけでゴブリンは塵となり、叩きつけられたオークはその場でひっくり返りました。
「よっ」
そんなノンを捕まえようと四方からオークが彼に突っ込んできます。それを読んでいたため、ギリギリまで引きつけ、足元に包帯の先端を突き刺して一気に伸ばしました。すると、ノンの体が上に移動し、四体のオークがお互いに顔面から激突します。
眼下で倒れ込むオークたちを見ながら包帯を回収。そのまま、上でぐるぐると幾重にも重ねていき、巨大な塊を作りました。ノンの魔力をたっぷり注がれたそれは仄かに輝き、その時が来るのを待っています。
「よいしょー!」
そして、その巨大な塊を真下へと振り下ろしました。塊は四体のオークを叩き潰し、同時に塵にしてしまいます。
ですが、オークはまだまだいました。空中で身動きの取れないノンに向かって数体のオークが岩を投げつけます。
「おっと」
迫る岩をかわすため、包帯を縮めて下へ移動。ノンの頭上を岩が通り過ぎ、彼は巨大な塊に着地します。そんな彼に向かってオークたちが一斉に詰め寄ってきました。
しかし、ノンは焦りません。すでに彼は十分に仕事をしていましたから。
「やるじゃねぇか!」
そんな声と共にノンへ迫っていた一体のオークの腹部から炎が勢いよく噴出しました。そう、魔法使いさんが隙だらけの背中を殴ったからです。殴られたオークは一瞬で塵となり、周囲のオークたちが目を見開きました。
ノンの目的は誘導。自分に注目させ、魔法使いさんが突っ込む機会を作り出すことでした。
「おらおら! おめぇらの相手はあいつだけじゃねぇぞ!」
大声で叫びながら次から次へと殴る魔法使い。それはまさに一撃必殺。殴られたオークは炎をまき散らしながら塵になり、どんどん数を減らしていきます。
「すご……」
ボン、とオークが爆裂する音を聞きながらノンは思わず感嘆の声を漏らしてしまいました。魔法の威力もそうですが、それ以上に魔法使いさんの体さばきがあまりに洗練されていたからです。
オークの体は頑丈であり、肥えた体は打撃の衝撃を吸収します。包帯の拳で殴った時、一撃で倒せなかったのはそれが原因でしょう。しかし、魔法使いさんは的確に急所を撃ち抜き、致命傷を与えています。一体、どれほどの鍛錬を積めばあれほどの技量を身につけることができるのでしょう。
「……」
少しでも魔法使いさんが戦いやすいようにオークの足を鋭くした包帯で斬り裂きながらノンは彼女の動きを観察し続けました。少しでも自分のものにできるように。
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