第112話 助太刀
(まずいっ!)
反対側の森から魔法使いさんに向かって放たれたもの――それは小さなナイフでした。それを見たノンは咄嗟に包帯を伸ばします。
「ッ――」
その時、飛んでくるナイフに気づいたのか、魔法使いさんはそちらへ視線を向け、右手を動かしました。しかし、その手には大きな杖はありません。杖は魔法の行使を補助する魔道具だとオウサマが教えてくれました。あの状態では魔法を使えない可能性もあるため、ノンは彼女の右手よりも早くナイフを弾き飛ばします。
「え!?」
彼女からしてみれば背中側から突如として白い何かが伸びてきてナイフを弾いたように見えるでしょう。驚いたようにノンの方へと振り返りました。それが大きな隙となり、森の奥から四体のゴブリンと二体のオークが現れます。
「ちょ、聞いてないんだけど!」
追加の魔物が現れ、動揺する魔法使いさん。さすがに助けに入ろうとノンは茂みの中から飛び出し、魔法使いさんを追い越してゴブリンたちへと接敵します。
「え、は? 子供!?」
「後ろから援護お願いします!」
後ろから聞こえてくる魔法使いさんの言葉には答えず、指示だけ出してノンは先頭を走っていた盾持ちゴブリンへ肉薄。幼い見た目とはかけ離れた素早い動きに相手は咄嗟に盾を構えませんでした。
「しゅっ」
そんな隙だらけの腹部へ彼は右拳を叩き込みます。魔力循環による強化を得た鋭く、思い一撃。盾持ちゴブリンの体は後方へと吹き飛び、剣士ゴブリンとぶつかって二体揃ってその場に転がりました。
「よっ!」
続けざまにノンへ矢を放とうとしていた弓矢ゴブリンへ右の袖口から包帯を伸ばします。いきなり、伸びてきたそれにゴブリンは驚き、動けなくなった隙を突いて弓矢を叩き落としました。
残ったもう一体の剣士ゴブリンがノンへ斬りかかります。ですが、冷静に左の袖口から伸ばし、剣のように鋭くした包帯で受け止めました。そして、縮めた右の包帯を剣士ゴブリンへ巻き付けて持ち上げます。
「せーい!」
そのまま立ち上がろうと盾持ちゴブリンと剣士ゴブリンへと叩き込み、三体同時に倒しました。弓矢ゴブリンはそれを見て喚き散らしながら逃走します。いきなり現れた子供に仲間たちがやられて恐ろしくなったのでしょう。
「――!」
ですが、残ったオークは逃げる様子もなく、ノンへ巨大な棍棒を振り下ろしました。テレーゼの弾幕に比べたら遅すぎる攻撃を彼は後ろへ飛んで避けます。そして、再び前に出て棍棒を踏み壊しました。
「ッ!?」
まさかただの子供に棍棒を――しかも、ただの踏み付けで破壊されるとは思わなかったようで豚に似た顔が大きく歪みます。そんな隙だらけの顔面へ包帯で作った拳を叩き込みました。子供の体なため、リーチの短い彼が編み出した遠く離れた相手にも攻撃できる手段の一つ。魔力を込めて硬化しているため、包帯でも岩を壊せるほどの破壊力を持ちます。
「~~~!」
しかし、魔物は岩よりも硬く、オークはその中でも頑丈なため、ノンの一撃を受けてもその場にひっくり返るだけで塵になりませんでした。もちろん、オウサマとの勉強会でそれを知っていたため、慌てることもなく、トドメをさすために包帯の形を変えます。
(後ろから来てる)
その時、もう一体のオークが後ろから襲ってきました。ですが、魔力感知で魔物の位置を把握しているため、それを察知したノンがその対応を――。
「【爆裂】!!」
――しようとした時、後ろから迫るオークの頭蓋へ真っ赤に燃える拳が叩き落されました。
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