第111話 魔石
数分と経たずにノンは現場に到着します。そこは森の中でも比較的開けた場所であり、遮蔽物のない広場。そのため、巨石の上からでも木々に邪魔されることなく、見えたのでしょう。
(大丈夫かなー)
彼らに見つからないように茂みから顔を出しました。どうやら、まだ魔法使いさんとゴブリンの戦いは続いているようですぐに助けに入れるように目と耳を強化してその場で様子を見守ります。
「もー、めんどいわねー」
(女の人?)
ボン、と火球を飛ばしながら弓矢を持ったゴブリンから放たれた矢を回避する魔法使いさんはボソリと呟きました。その声は高く、やっとその魔法使いさんが女性であることがわかります。
「よっ」
火球により、七体いるゴブリンの一体が弾け飛ぶのを見た彼女は次の標的に杖の先を向けました。その先にあるのは氷の棘。炎だけでなく、水魔法も扱えるようです。
(優秀な魔法使いなのかな?)
オウサマの話では基本、人間は魔法の属性適性は一種類。二種類以上操れる人は天才だと言っていました。そのため、目の前で炎と水を操る彼女は優れた魔法使いだと思われます。
(お母さんは四つも使ってたような……)
復習目的で魔法適正について思い出していた時、息子をあやすため、炎、水、風の球を作ってジャグリングしていたエフィの顔を思い出しました。更に彼が装備している指輪が外れないように呪い――つまり、闇魔法まで使っていたので四つの適性をもっていることになります。
ノンにとってエフィはちょっとドジな優しいお母さんという印象があり、魔法使いの顔を知りません。優秀な冒険者だったという話もちょっと信じられませんでしたが魔法の天才だったのなら話はわかります。きっと、様々な魔法を使ってジェードと共に戦っていたのでしょう。
「やっ」
その時、魔法使いさんが氷の棘を射出し、弓矢ゴブリンとそいつを守るように立っていた剣士ゴブリンを串刺しにして倒しました。すると、倒れた二体のゴブリンが塵となって小さな赤い宝石がその場に落ちます。
(あれが魔石か)
魔石。魔力が一か所に集まることで出現する魔物を倒すと落とす宝石です。精霊石と同じように魔力を通すことで様々な効果を発揮する魔道具の原材料。精霊石の方が魔力効率はいいですが、精霊に気に入られない限り、手に入らない希少なもの。その代わりとしてまだ安価に手に入る魔石を使った魔道具の方が市場に出回っているのです。
(うちってほんとに裕福だったんだなぁ)
精霊石内臓の魔道具に囲まれて生きていたノンはまだ知らないおうち事情に少しだけ身震いします。なお、精霊の国では精霊石を渡そうとする精霊はたくさんいましたが魔道具に加工できない現状、宝の持ち腐れ――いえ、それどころか持っているだけで悪い人に狙われる可能性があるため、オウサマが全て突き返していました。
「これで、最後!」
そんなことを考えている間に魔法使いさんは盾持ちゴブリンを燃やします。七体もいたゴブリンはたった数分で全滅してしまいました。巨石の上から見る前から戦っていたため、もっと数もいたでしょう。そんな集団をぎこちないながらも倒してみせた魔法使いさんはまだ経験の浅い実力のある冒険者なのかもしれません。
「ふんふーん」
戦闘も終わり、魔石を拾い始める魔法使いさんはどこか得意げに鼻歌を歌っています。そして、そんな彼女に向かって反対側の森から何かが放たれました。
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