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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第一章 英雄くんはおうちに帰りたい
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第108話 旅立ち

「準備は大丈夫か?」


 マジックバックを背負うノンを見てオウサマは優しく声をかけます。そんな彼女の後ろにはどこか不安そうな空気を漂わせる無数の精霊たち。彼らはノンの旅立ちを見送るためにここに集まってくれたのです。


「はい、できました」

「そうか……」

「……」

「……」


 ノンとオウサマは見つめ合いながら黙り込んでしまいます。この一年、彼女と顔を合わせない日はほとんどありませんでした。だからこそ、こんな時、なんと声をかけたらいいのかわからなくなってしまったのです。


「あー……気を付けてな」

「……はい」

「マジックバックもそうだが、お金や食料もよく狙われる。気を引き締めて旅をしろ」

「はい」

「あとは――」


 それからオウサマは旅をする上で注意するべきことを長々と話し始めました。きっと、テレーゼがいたら『お母さんですの!?』とツッコみを入れているでしょう。


「ふふっ」

「ん? どうした?」

「いえ、なんでもないです」


 そんな光景が思い浮かび、思わず笑みを零してしまいました。ノンが突然笑い出したため、不思議そうにするオウサマでしたが彼は適当に誤魔化します。本当のことを言えば彼女は拗ねてしまうでしょうから。


 ノンの気遣いに気づかないまま、オウサマは続きを話し始めます。それはこの半年間で何度も聞いた旅の極意。そんな話を復習程度に聞き続けました。


「そして、最後に……」

「ん?」


 しかし、教わったことを聞き終えた後、まだ話をしようとする彼女に彼は首を傾げます。今日でお別れなので餞別の言葉を贈るつもりなのでしょうか。




「仲間を見つけろ」




「ッ……」

 そんなことを考えていたからか、彼女の言葉に彼は思わず息を呑んでしまいました。


「な、かま?」

「ああ、人は一人では生きていけない。たとえ、今のノンがどれだけ強くなろうと不可能だ」


 たった一人で旅をしようとするノンにオウサマはそう断言します。


 ノン自身、それは知っているつもりでした。ですが、旅の途中で仲間を見つける、という発想がどこにもなかったことは確かです。


(仲間、か……)


 旅の目的は家に帰ること。そんな彼の目的に付き合ってくれる物好きはどれほどいてくれるのでしょう。特にこの世界は前世と比べて生活水準は低く、旅をするのも命がけです。ただ家に帰ろうとする幼い子供と一緒に行こうとする人は限りなく少ないでしょう。


「……見つかるでしょうか」


 その事実がノンに弱音を吐かせました。これから一人で旅に出るというのに弱気になってしまったことに気づき、ハッとして顔を上げます。


「ああ、見つかる。お前なら見つけられる」


 そして、そこには自信を持ってそう断言するオウサマがいました。その真剣な表情に彼は言葉を失くしてしまいます。


「ノン、お前は立派な人間だ。たとえ、子供であっても精霊の王であるこの私が認める。だから、自信を持て。お前には私たちがついている」

『のんー!』

『がんばれー!』

『またあおうねー!』

「みんな……」


 オウサマの言葉を皮切りに精霊たちが一斉にノンへ声をかけ始めました。それはとても温かく、彼は自然と笑顔を浮かべてしまいます。


「さぁ、行ってこい! 家に帰ったら経験したことを家族に教えてやれ! 僕は精霊の王とその仲間たちと友達(・・)になったんだと!」

「ッ……はい、オウサマ!! 行ってきます!!」」


 そんな言葉と共にポンと背中を押されたノンは袖で目元を拭い、一気に駆け出します。目指すは森の外。人間の国。そして、おうち。


「この旅で経験したことを話に出会った仲間と共に遊びに来い! また会おう、我が友よ!」

「はい、必ず! また、会いましょう!」


 広場を駆け抜けたところで珍しく大きな声を出したオウサマたちに手を振り、そんな約束を交わしたノンは後ろ髪を引かれる思いの中、意を決して森の中へと入ります。


 こうして、一年にも及ぶ精霊の国の滞在は幕を閉じ、彼はおうちに帰るための旅に出たのでした。

これにて第一章、完結でございます!

今日まで多少、乱れはしましたがほぼ毎日3話投稿できてよかったです!

一話だけ閑話を挟み、第二章へと突入します!

ノンがおうちに帰るまでお付き合いいただければと思いますので

これからもよろしくお願いいたします!

もちろん、感想、レビュー、ブックマーク、高評価お待ちしております!

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