第105話 合格
「……」
幼龍との戦闘から一夜、明けました。彼女と友達になった後、しっかりと休んだため、疲労はすっかりと回復し、いつもの日常を過ごしています。
今は午前中の魔力感知を鍛える時間。そして、オウサマが出した数当ての試験中でした。
オウサマの周囲に漂う魔力。それが少しずつ形になっていき、水球ができる。それを目を閉じた状態で感じ取り、最終的な水球の数を当てるだけ。しかし、ノンは一度も数を当てられたことはありませんでした。
(……ん?)
いつものように魔力を感じ取り、数を数えていた彼ですが昨日よりも鮮明に魔力を感知できることに気づきます。感覚的な話なので言葉にはできませんが魔力の形をより感じ取りやすくなった、と表現するのが一番近いでしょうか。
(もしかして)
「……四つ」
「……目を開けてみろ」
なにかを掴んだ彼は水球の数を答えます。そして、数秒ほど経ってからオウサマがそう指示しました。これまでと同じならここでノンは目を開け、水球の数を確かめて間違っていることに気づく。そんなやり取りを繰り返していました。
「……」
「ノン、どうした?」
ですが、今日のノンは目を閉じたまま動きません。それが不思議だったのでしょう。オウサマが声をかけます。
「今、五つになりました?」
そして、ノンは答えを変えました。オウサマの周囲に浮かんでいる水球。ノンが数を答えた後にその一つが二つに分離したように感じたのです。
「ッ……はぁ、目を開けろ」
ノンの答えに息を呑んだ彼女はため息交じりにそう言いました。今度は水球に変化は起きていないようだったので彼も目を開けてその数を数えます。
「五つ……」
「もうちょっと時間がかかると思ったが……正解だ」
「ッ! やった!」
オウサマの周囲に浮かんでいる水球の数は五つ。そのうちの二つは他の水球よりも僅かに小さく見えました。
「あーあ、ばれてしまいましたわね! あなたの悪行が!」
そんな二人を傍で見ていたテレーゼが何故か勝ち誇ったようにオウサマを指さします。彼女は精霊の国に滞在している間、この数当てにも立ち会っていたのでオウサマの悪戯を知っていました。ずっと数を外して落ち込む彼を見ていたので思うところがあったのでしょう。
「ノンはずっと形になっていない魔力ばかり探っていたからな。魔力感知は魔力だけでなく、魔法となった魔力との違いも知っておくべきだと思って……すまなかった、ノン」
「い、いえ! ものすごくためになりました!」
実際、この数当てをしていなければ幼龍に負けていたでしょう。彼が濃い蒸気の中で自由に動けたのは紫色の精霊に見えない程度の靄を作るように指示し、その靄を魔力感知で察知して道標としていたからでした。
「……」
「オウサマ?」
数当ての試験をクリアしたことで気分が高揚している彼でしたが、オウサマが思い悩んでいるような表情を浮かべていることに気づきました。
「……はぁ。そろそろいいんじゃない? もうずっと昔から認めてたのでしょう?」
「え、それって……」
そんな彼女の様子にテレーゼはため息を吐きます。認める。その言葉は以前、オウサマ自身から聞いたものでした。
「そう、だな……幼龍も倒し、この数当ても正解した。認めるしかないだろう」
「ッ!?」
「ノン、随分と待たせてしまったな。合格だ」
合格。つまり、ノンが一人で旅に出ることを許す、とオウサマは告げたのです。
そう、ついに彼は家に帰るため、旅に出る時が来たのでした。
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