第103話 友達
「その、友笛というのは?」
「龍が友と認めた相手に渡す笛のことだ」
友の笛と書いて友笛。言葉を聞くだけではオウサマが驚くような要素はないように思えます。
「ノン、いいか。友笛は龍が認めた相手にしか渡さない笛だ。それを吹けばその持ち主のところへ駆けつける。どんな時でもだ」
「……え?」
どんなところでも龍が駆けつけてくれる。そう、普通の人間ではひっくり返っても勝てない力の象徴が、です。それは一体、どれほどの影響力があるのでしょう。この世界に疎いノンには想像すらできませんでした。
「あいつはノン殿に負けているし、懐も深く、家族と離れても気丈に振舞える度量もある。認めないわけにはいかなかったんだろ」
「そう簡単に言うがお前はいいのか!? ノンが友笛を吹けば住処を飛び出してそこへ向かうんだぞ! まだあんなに幼いのに!」
「はっはっは! いい友を持ったな!」
「おい!」
そんな二人のやり取りを見てノンはオウサマが慌てている理由を察しました。彼女は他の精霊と同じように子供が大好きです。そんな彼女は親元を離れてしまうきっかけとなりえる友笛に思うところがあるのでしょう。
「まぁ、いいじゃない。ノンくんもいたずらに笛は吹かないでしょ?」
「もちろん、家族と離れる寂しさは知ってるから」
「……龍としてはむしろ、どんどん吹いて欲しいんだがな」
オウサマを落ち着かせようとしたテレーゼの言葉にノンは頷きます。しかし、それを聞いた龍王はどこか納得していないような声音で呟きます。種族の違いによる考え方の相違でしょう。
「―――!」
「おっとっと」
その時、上空で幼龍が吠えました。そして、勢いよくノンの傍に着地します。その風圧で料理の乗ったお盆がひっくり返りそうになったので慌てて包帯でドームを作り、風と誇りから料理を守りました。
料理が無事なことを確認し、幼龍へ顔を戻すと彼女はうきうきした様子で口に漆黒の角笛をくわえていました。大きさは予想よりも小さく、ノンの掌にも乗せられるほどです。そして、視線を上に戻せば彼女の角の片方が折れていることに気づきました。
「え、角どうしたの!? 大丈夫?」
「ああ、友笛は己の角を折って作られる。すぐに生えてくるから心配はない」
『それよりも』と龍王は視線でノンに何かを訴えかけます。受け取るのか、受け取らないか。お前が選べ、と言われているようでした。
「ほんとに僕でいいの?」
「♪」
きゅるると喉を鳴らして笛を差し出す幼龍。そんな彼女にノンは思わず苦笑を浮かべてしまいます。
「じゃあ、今日から僕たちは友達だ。よろしくね!」
「―――!」
そう言って漆黒の角笛を受け取り、幼龍は嬉しそうにノンへ頭をこすりつけました。そんな彼女の頭をノンも優しく撫でます。
こうして、ノンは幼い黒龍と友達になりました。
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