第101話 敗北
「まぁ、こっちに来い。色々と話したいことがある」
祭りと聞いて目を白黒させているノンの肩に手を置いたのは龍王でした。首が痛くなるほど見上げれば彼はどこか優しげに微笑んでいます。
(こうして見ると人間にしか見えないなぁ)
龍王は人化の魔法が使えるため、大きな体が入らない場所では人間の姿に変身しているそうです。逆にあの黒龍は幼いため、まだ上手く魔法が使えず、人化ができないと龍王が来る前にオウサマが説明してくれました。
そんなことを考えながら龍王に誘導されつつ、先ほどまで三人が食事をしていたテーブルに辿り着きます。食事といっても龍王がお酒の肴として食べている巨大な肉とお酒の入ったボトル、オウサマとテレーゼが使っているコップ以外は何も乗っていません。とりあえず、誰も使っていなかった席に座りました。
「おい、ノン殿の食事を持ってこい」
「……」
龍王が誰かに声をかけると少し遠い場所から精霊たちに囲まれた黒龍がすーっと滑るように現れます。その巨大な手にはノンのために用意されたと思われる豪華な食事が乗ったお盆がありました。器用に人差し指の爪先を取っ手の掴む部分に突っ込み、運んできます。
「あの、これは?」
「今日の罰だ」
どうやら、暴走の罰として給仕係をさせられているようでした。彼女自身もシュンとしており、深く反省しているようです。
「えっと……ありがとう」
「っ……」
お盆を受け取ったノンがお礼を言うと幼龍はどこか意外そうに目を見開き、その場でガクンと崩れ落ちました。何が何だかわからず、ノンは首を傾げてしまいます。
「戦いに負けただけでなく、お礼まで言われるとは……お前の完全敗北だな」
「え?」
「普通、いきなり襲われたら文句の一つも言いたくなるでしょ? それすらなかったから内面的な意味でも負けたってこと」
「でも、住処を守るって気持ちはすごいいいことだし、お父さんがいない状態で一人で戦うのもすごく勇気がいることだと思うから」
「ッ!?」
まさか庇われるとは思わなかったらしく、とうとう幼龍は参りましたとその場でひっくり返ってノンにお腹を晒します。どうやら、降参の合図は前世の犬と同じようでした。
「はっはっは! 強いだけでなく、懐まで深いか! こりゃ、将来は大物になるな!」
「そうだろうそうだろう。ノンはすごいんだ」
「どうして、あなたが嬉しそうにするんですの? まぁ、わたくしたちがこの半年間、みっちりと鍛えたのですからこれぐらいやっていただかないと!」
「お前も嬉しそうだぞ」
ノンが褒められ、ニヤニヤと笑うオウサマとテレーゼに龍王は若干、引いた様子で顔を歪めます。しかし、それを聞いたノンはこの半年間、面倒を見てくれた二人に笑顔を向けました。
「オウサマとテレーゼに鍛えてもらってなかったら勝てなかったのは本当です。二人とも、本当にありがとう」
「……」
「……」
「子供に感謝されて本気で照れるな。お前たち、何年生きているんだ」
真正面からお礼を言われると照れ臭くなってしまったのか、もにょもにょする精霊王と妖精王に龍王は今度こそ本気でドン引きしました。
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